■茶室

茶の湯

茶室では、室内装飾のための色々な物は、色彩も意匠も重複しないように選択する必要がある。もし生花を用いるならば、花の絵を掛けることは許されない。もし丸い茶釜を使うなら、水差しは角ばったものでなければならなければならない。黒茶碗は黒塗りの茶入れ(棗)と並べて用いることはできない。花入れや香炉を床の間に置くのにも、それを真正面に置かないように気をつける必要がある。また、室内の単調さを破るために、床の間の柱は他の柱とは違った種類の木材を用いなければいけない。
茶室の簡素なこと、その俗塵から離脱していることは、真にそれを外界の煩わしさからの避難所にしている。そこにおいて、また、そこにおいてのみ、人は攪乱されない美の礼拝に打ち込むことができる。16世紀にあっては、日本の統一と再建に従事した猛々しい武人や政治家たちに、茶室は塵労からの悦ばしい体息を与えた。17世紀に入って、徳川幕府の厳格な形式主義が発達してからは、それは芸術精神の自由な交流のためのただ一つの可能は機会を提供した。偉大な芸術品の前には、大名と、武士と、平民との差別は存在しなかった。