「都都逸に触れると 当時の気持ちのやり取りを想像させられます」
京都の花街・祇園の夜には、雅びな艶やかさがあります。夜な夜な粋人たちが舞妓や芸妓を伴って集うのが、『並木井』です。カウンターの中ではご主人の並木井さんが、三味線を爪弾きながら唄います。三十一文字に重ねて男女の情を俗語で語り聴かせる都都逸や、さらりと粋に情愛や世相を唄う小唄は、知的な言葉遊び。「昔から旦那衆が唄いに来られたものです。今はほとんど唄う人はいなくなりました」と並木井さんは回想します。「遊びというのは騙されること」と前置きしてから、遊びの奥義を瓢箪に例えて語り出しました。「入口に勝る難所の中くぐり。通りて奥の味こそ知れ」
ベスト・バイ 「京の”若旦那”が教える、春爛漫」 2004年