MEDIA メディア
和小物 風呂敷、懐紙…いつも持ち歩けばこれほど便利な道具はありません

■とくおか くにお

京都吉兆嵐山本店・総料理長。1960年生まれ。15歳から料理の道に入る。95年から京都吉兆嵐山本店の総料理長に。幼い頃から祖父の湯木貞一氏について茶道に親しんでいたために、和道具は常に身近で20代の頃は常に懐紙、扇子、袱妙の3点は携帯していた。

 

風呂敷や懐紙と聞くと、どうも古くさい印象がありますが、私はこれほど新しく粋な道具はないと思っています。とはいえ、スーツでのビジネスの会合で風呂敷や懐紙を取り出せば、やはり奇異に映るもの。仕事柄、常に和の道具はそばにありますが、むやみやたらに持ち歩くことはありません。

目上の方の前で、したり顔で扇子を取り出したところで恰好なんてつかないでしょう。要は、どんな場所でどう使うか。TPOさえわきまえて使いこなせれば、必ず一目置かれます。いくつか私の使い方をご紹介しましょう。

まずは風呂敷。たった一枚の布ですが、洒落た柄行きのものをひとつ持っておくと、非常に重宝します。

女性であれば、膝掛けにしたりスカーフ代わりに巻いてみたり。きれいに折り畳んでブローチで留めれば、とてもエレガントなセカンドバッグにもなります。男性であれば、不意の荷物を包むのにこれほど役立つものはありません。紙袋にがさごそまとめるよりも、よっぽどスマートです。よく裁判所に出向く弁護士が風呂敷で書類をまとめている姿を目にしますよね。あれは、書類に合わせてカバンを選ぶより、どんなに多くてもまとめられる風呂敷が便利だからだそうです。ああして包むのは一般的な使い方ですが、ちょっとした結び方を覚えれば、カバンのように持ち手をつけたり、リュックのように背負うことだってできます。

以前、京都吉兆の80周年の時に、エルメスと共同で風呂敷を作りたくて、パリの本社まで出向いたことがありました。外国人から見ると、風呂敷は非常に新鮮に映ったようで、トントン拍子に話が進みました。諸事情があって結局は実現しなかったのですが……。外国に出かけることも外国人と接することも当たり前の今日。海外出張に出かける際、トランクの片隅に放り込んでおけば、便利な上、話も盛り上がるのではないでしょうか。

日経おとなのOFF 知らないと恥しい「和」の必須知識 2007年特別編集

  • ページ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
閉じる