同じ時期、食関連の不祥事でブランドイメージを大きく傷つけた会社がもう1つある。菓子メーカーの不二家だ。
2006年に埼玉の工場でシュークリームを製造する際、賞味期限が切れた牛乳を使用していたことが社内調査で明らかになった。この情報の公開は管理職レベルで止められたが、翌年内部告発によって世間に知られるところとなった。その後も消費期限切れの鶏卵やリンゴの加工品を使用していたことや、社内規定の100倍を超す細菌が検出されたシューロールを出荷していたことなどが判明した。 さらには、問題の発火点である埼玉工場で月に数十匹のネズミが捕獲されていたことなども報道され、ずさんな衛生管理体制や、情報を隠蔽した上層部の姿勢に対する批判が集中した。洋菓子の製造販売は中止され、フランチャイズチェーン展開している洋菓子店の前では、迎える客を失ったマスコットの「ペコちゃん」が、むなしい笑顔でたたずむばかりだった。 影響は生菓子とは無関係の小売り向け一般菓子にも及んだ。「ミルキー」や「カントリーマアム」、チョコレートの「ルック」といった同社の看板商品はスーパーやコンビニエンスストアの店頭から撤去された。売り上げが消えただけではない。フランチャイズ加盟店に対して週に1億円を超える補償を余儀なくされるなど、出血も伴った。 財務力の弱い不二家が自力で耐え忍ぶには無理がある。やむなく山崎製パンの業務支援や出資を受け、現在は同社の連結子会社になっている。 社内調査の情報を隠したことが、会社の存亡にかかわる重大事態に発展するとは、当時の経営陣は思ってもみなかったに違いない。甘い衛生管理に象徴される「なあなあ」の企業風土は、
雑誌名:日経ビジネス2009年11月9日号 信頼回復へのイバラ道