もともとは農家の種子入れだった器を、江戸時代初期に活躍した石清水八幡宮の社僧である
松花堂昭乗(1582〜1639)が取り上げ、小物入れにしていたと伝えられています。
吉兆の創業者・湯木貞一がそれを弁当箱に考案したものです。
松花堂昭乗は寛永の三筆(近衛信伊・本阿弥光悦・松花堂昭乗)の一人とされ書画や茶の湯
に優れていました。
京都と大阪の中間にあった石清水八幡宮、滝本坊の住持でしたが、晩年には、 隠居所として
の松花堂を構え、風流な詫び住まいで生涯を送ったそうです。
昭和8年、湯木貞一が松花堂昭乗の旧跡での茶会に出向いた折、 ある部屋の片隅に置いてあ
る四角い器を見つけました。 高さが3,5cmで田の字型の仕切りがあり、茶色で3ヶ所に墨絵
が描いてあって、四方に金具が付いていました。種子や薬入れ、また小物入れ、たばこ盆に
使われていた、と聞きました。
湯木貞一は、これを料理の器としたらどうかと考え、その1つを譲り受けて持ち帰り、 工夫
を重ねました。
辺の寸法を縮め、高さを高く やや深めにして元になかった蓋を付けて、四つのそれぞれの升
に違う料理をバランス良く盛り込み、大寄せの茶会の点心などに用いたところ 大変な好評
を得ました。戦後には徐々に広まり、現在では知らない人がいないくらい一般的になりまし
た。
お領けいただいたものは、現在も大切に保存してあります。 |
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