漆器は陶磁器の「チャイナ」と比較して日本を代表する工芸品「ジャパン」といわれていま す。
「漆」は松や杉などと同様の樹木であるのに、「きへん」を使わ ず、「さんずいへん」を使っているという事に 疑問を持たれた方も いらっしゃると思います。
うるしは紛れもなく 生木の樹液であるのです。
その樹液は木からとったばかりでは、乳褐色の 粘りのある液体でしかないのですが、(金、銀、ダイヤと同じように)加工する事によって艶のある光沢をあらわしてくれます。
この独特の艶は化学塗料では真似出来ない物なのです。
そして古来より生活用具として塗料または接着剤、防水剤として使われてきました。
漆器は常に歴史の中で その当時の文化や人々の気質を様々な姿で表現する為に必要とされてきたのではな いでしょうか。
それ故に、本来、野生の木である漆の木は人工的に植えられ、枯渇させない様 あらゆる保護を加えられてきたのでしょう。
うるしの樹液の必要性と潤いのあるの艶は、森林が多く多湿地帯である日本には感 覚的に馴染み、「漆」という言葉が生まれたのではないでしょうか。
そして、漆のもつ魅力は、手や口につけた感触も挙げられるでしょう。言い換えると、うるしの塗り物は、きめの 細かい、しっとりとした肌になるので、同じ天然物である木の素地と組み合わせる事に
よって、かろやかで、なじみやすい物となるのだと思います。
そういうことの 要因が 「漆」という言葉が生まれた要因ではないでしょうか。
代表的なものに日本人の食生活に欠かすことのできない食器に「椀」があります。椀は陶
磁器と違い割れることなく熱湯や塩分、酸に耐え、温度も保ちながら手に触れても熱さを感 じることなく、直接口に触れる感触はその軽量感とともに椀の料理の味を一層引き立ててく
れます。さらに蒔絵などの装飾的な効果で四季や風情をも感じさせてくれます。
昨今、食生活では、遺伝子組換え食品、残留農薬、残留成長ホルモン、添加物、ひいては環境汚染など様々な
問題があります。
「利便性のある世の中になった。」と言えば、それまでですが、古くから日本人の食生活で密接な関係の ある 漆の椀に一度口を触れてみてください。
天然物がもつ不思議な魅力を感じるのではないでしょうか。そして、木地とうるしの樹液の自然が作り出した椀の中にある料理が、どれだけ自然と関わっているのか、改めて考えてみる事も 必要かも知れませんね。
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