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特集日本文化創造プロジェクト嵐山本店 座敷「待幸亭」大改修
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総料理長 徳岡邦夫 コラムCOLUMN from executive chef Tokuoka Kunio

2025.04.22

ポメリー × 京都吉兆 × MUNI ALAIN DUCASSE イベント

ポメリー × 京都吉兆の「新しい価値観に適応したシャンパーニュの探求」プロジェクトは、次なるステージへ
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桜の花咲く嵐山で、フランスのシャンパーニュメゾン、ポメリーのオーナー社長、ナタリー・ヴランケンさんをお迎えして特別ディナーを開催しました。
ポメリーさんとの「新しい価値観に対応する為のシャンパーニュの探求」イベントも、今回で4回目となりました。
これまでの食事会やワークショップなどを経て、シャンパーニュと蛤汐出汁との相性の良さは、誰もが認める所ですが、同じ料理では、可能性が広がりません。
2011年に、発刊した「京都吉兆」本で掲載した料理の試みや、これまでの海外イベントで、試行錯誤して産み出してきた美味しさなど、いろいろ挑戦してきた事を組み合わせて今回の献立を考え出しました。
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例えば、スッポンの汐仕立てに、焼フカヒレと胡麻豆腐の煮物椀です。
合わせたシャンパーニュは、7℃に冷やした『Cuvee Louise magnum 2004』。
「スッポンの凝縮した奥深い味わいと昆布の甘みを伴う“うま味”が、マグナムボトル特有のフレッシュさと幾重にも重なり多層的で、複雑なフレーバーが出汁の風味と素晴らしく調和。また、香ばしい焼き目がついたフカヒレのフレーバーが、シャンパーニュのオートリシス(パンだねやイーストのような香り)の個性と一体となり、更なる一体感を生むペアリング」とは、ソムリエの岩田渉さん評。
日本酒を使わず、昆布出汁だけで、スッポンを汐仕立てにしているので、雑味が全くないとてもクリアなスープに仕上がり、スッポンの上品な脂分とうま味がシャンパーニュの酸味と調和。ゲストからは「こんなの食べた事ない!」とのコメントを頂き、新たなマリアージュを実現する事が出来ました。
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シャンパーニュの美味しさを構成する要素のひとつとして、酸味は、凄く大切な要素だと考えています。
それをどの様に、日本料理的な健康に良い料理と合わせるかがポイント。植物性と動物性のうま味、グルタミン酸、イノシン酸、コハク酸、グアニル酸等々を掛け合わせて、相乗効果的に”うま味”を増幅させ、日本的なミネラル感や、香りをバランス良く組み合わせる事によって、シャンパーニュの酸味とマッチし、互いを引き立てる美味しさを醸し出せると考えています。
勿論そこには、味の構成や食感や香りが複雑に絡んできます。
具体的には、自然発酵による酸味があり、無添加で作り上げた京都吉兆オリジナルの“しば漬”や“すぐき漬”を、牛肉や鶏肉と合わせたり、中トロの握りのシャリは、発酵酢とシャンパーニュの酸味と同調性を感じるよう加減を調整しました。加減がすごく難しいです。
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八寸は、様々な味わいの料理がありながら、一つのシャンパーニュに合わせる難題。
「一般的には、八寸の様な様々な食材を異なる調理法にて仕上げるお皿には、100点満点のペアリングをそれぞれに創り出す事は、ほぼ不可能です。その中で、京都吉兆だから可能になった、こだわりの食材と多角的なアプローチによって、シャンパーニュにも通ずる要素を沢山仕込んだこの八寸は、まさにシャンパーニュの為に創作された芸術作品の様でした」と岩田ソムリエから高評価を頂き、お客様やマダム・ヴランケンも大はしゃぎするほど好評でした。
健全に熟成され、うま味と酸味とのバランスが素晴らしい『Cuvee Louise 1998』と合わせたからです。
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今回のコラボレストラン「MUNI ALAIN DUCASSE」からは、苺のデザートと、湯葉とカカオを使ったデザートの2品を、『Louise Rose 2004』と『Cuvee Louise 2006』、それぞれとペアリング。こちらも大変好評でした。

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昨年は、有名料理人やホテルのソムリエ達とワークショップを行い、シャンパーニュと日本料理のペアリングの可能性を共有できました。
その後、このイベントに参加した日本料理店やレストラン、有名ホテルに、ポメリーのキュヴェルイーズシリーズが扱われる様になった、と聞き、このプロジェクトの成果を実感しています。
キュヴェルイーズポメリーは、シャルドネを60%以上とピノノワールのみを使用したシャンパーニュ。この割合が、日本料理的な健康に良い料理によく合うのだとも思います。

個人的には、アペリティフ、乾杯でお出しした『Apanage Brut 1874 magnum for aperitif』に大きな可能性を感じています(このシャンパーニュはシャルドネ40%)。これは、一昨年来日し、第1回のイベントにも参加して頂いたポメリーの最高醸造責任者クレマン・ピエルロー氏が、新しい時代の“ブリュット”=辛口のシャンパーニュを目指して造られたもの。2018年を中心に2012年、2015年のキュヴェをブレンドしているそうで、繊細でフレッシュ、でも熟成感もしっかりあり、それなのにお手頃価格という掘り出し物です!ただ、レストランでしか味わえません。
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マダム・ヴランケンとは、次回はニューヨークで、有名シェフやソムリエ、そしてフーディー達を招いてイベントができたらいいですね! と盛り上がり、ポメリーのワイナリーがあるランスに行く事も約束しました。
ゲストの皆さんは、新しい食体験をして興奮されていて、口コミで広まったのか、イベント直後に、同じ料理を食べたいと予約も入る程でした。

以前からお話ししていますが、従来の日本料理とシャンパーニュは合わない。と、私は考えています。
ですが、日本料理に工夫をし尽くせば、シャンパーニュに寄り添わせる事は出来ます。

イベントを重ねた事で、シャンパーニュと日本料理的な健康に良い料理との相性の良さを表現出来る様になったと思います。
料理とドリンクのペアリングは、お互いの味を補う事で、更なる美味しさを醸成させるのです。
人間関係も同じで、何事も“互いに理解し合おうと努力し、諦めずに工夫し続け、寄り添い合おうとする事”が、永く関係を保つ為に大事だと考えています。

今までは、日本料理がシャンパーニュに合わせてきましたが、徐々に、シャンパーニュが日本料理に合わせる時が来ていると思います。
マダム・ヴランケンからは、「邦夫を選んで正解だった! 日本料理に寄り添う事にしました」との嬉しいコメントも頂きました。
このプロジェクトも今年で3年目を迎え、新たなステージに進みます。
次世代の為のシャンパーニュ造りを、本格的に世界に拡散したいと思います。