Menu

特集日本文化創造プロジェクト嵐山本店 座敷「待幸亭」大改修
ご来店予約 オンラインストア

Page Top

総料理長 徳岡邦夫 コラムCOLUMN from executive chef Tokuoka Kunio

2023.06.13

立命館大学にて 特別講義 「料理はアートか?」へ登壇

イタリア-食科学大学の教授が参加する立命館大学の特別講義「料理はアートか?」に登壇しました!

立命館大学の食マネジメント学部にて、イタリアのピエモンテ州ブラ市にある通称スローフード大学。正式には、食科学大学の副学長を招いての特別講義がありました。なぜか私もスピーカーの一人として参加させて頂きました。

テーマは「料理はアートか?」、登壇者は4名でした。

  • イタリア-食科学大学副学長のニコラ・ペルッロ教授 「料理はどの様にアートになりえるか?」
  • Dr.マッダレーナ・ボルサート 「アートとしてのパティスリー」
  • Dr.エレーナ・マンチョッピ 「食を使うアーティストの例」

そして、私は、「食の空間とアート」というテーマで、この春、改修が完成した嵐山本店の座敷「待幸亭」の歴史や職人の話、料理だけではなく、料理を頂く空間の大切さ、意味についてお話させて頂きました。

イタリアの先生達の話も興味深く、特にDr.エレーナが語った、“香り”についての事例は、印象的でした。
一例では、料理の香りだけを体験させて、喫食は一切させない食事会があったそうです。さすがに参加者は、お腹ペコペコで評判はよくなかった様ですが、料理を出す前に、香りを楽しんでもらう演出は、「京都吉兆」でも出来るのではないか!?と思いました。

実際、松茸等を座敷で調理する事は、既にやっていて、調理行程でたつ芳香が、部屋を埋め尽くしていく感覚は、凄くワクワクします。松茸など特徴的で強い香りは、満ち過ぎると嗅覚が慣れて、感覚が薄らいでいく事も実感しているので、今後、香りをもっと意識して工夫をしたいと思いました。

吉兆の創業者・湯木貞一は、料理に、茶道などの文化的要素を取り入れた先駆者でした。
お客様を迎えし喜んで頂ける為に、部屋を設え、器を選び、食材を吟味し、料理で季節を演出したりします。
味だけでなく、風情や私達の情熱も、五感を総動員させて体感して頂き、同席された方々と共に私達も、共通の価値観で感覚を一体化させる。一座建立を実現させるモデルを作り出しました。まさに、料理を意味のあるアートとして捉えた人であったと思います。

待幸亭は、それを表現した座敷。空間だと思います。
古くから長い期間、料理は、食べてしまうと何も残らないので、意味のあるアートとは認知されず、懇親の場でしかない。と過去の学者ボルサート氏も公言し、世界中で「食はアートではない」と、認知されてきました。
事実は、料理は味だけでなく、五感を刺激し、各々が体感する価値を通して、同席しているそれぞれの価値観が融合して、新たな価値を産み出しているのです。
食事をする空間も含めた体験が優れたアートと同じ効果を醸成しているのです。

食は、人を育み、人を繋ぎ、新たな価値を積み出す、人類には、なくてはならないアートだと思います。
改めて、料理と文化の関係や存在意義を考える機会にもなりました。本物とは何か?を感じる貴重な機会をありがとうございました。


▼ 立命館大学食総合研究センターのレポート
イタリア食科学大学 / University of Gastronomic Sciences
【特別講演】 料理はアートか? La Cucina è arte ?

▼ 立命館大学NEWS
イタリア食科学大学(UNISG)副学長らがご来学