2023.06.06
料理人を目指す学生たちに向けて出汁の講義を行いました!
2010年から、コロナ渦期間中以外は毎年、辻調理師専門学校の新入生に向けて特別講義を行って来ました。
今年も4月25日に、講義を行いました。
まだ授業も始まったばかりの学生達ですので、料理の基本でもある“出汁”のいろんな引き方や活用方法などを、試食を交えながら。要は、料理への向き合い方なども、お話しさせて頂きました。
一番出汁については、気候によって昆布の種類を変えて、1Lに対して50gの昆布を前日から10~13時間、冷蔵庫の中で浸水し、翌朝、味の調整をしてから、昆布を引き上げて、お客様が来店してから、必要なだけ昆布出汁を火にかけ、沸騰前に削りたての鰹節をサッと入れ、アクを取らず、すぐに濾します。
これが京都吉兆で煮物椀に使う基本の一番出汁の引き方ですが、あくまでもこれは参考です。
この出汁が全ての料理に適応した正しい出汁と言うわけでもなく、基本を学校で学びながら色々な体験をして、自分で実際に、様々なシーンで試し体感しながら正解を見つけて欲しい。と伝えました。
また、水によって、出汁の味は変わり、食材の組み合わせでも、美味しさは大きく変化します。
昆布やトマトに含まれるグルタミン酸、鰹節やお肉に含まれるイノシン酸、干し椎茸にはグアニル酸、貝類に含まれるコハク酸。様々なうま味成分があります。これらは単体でも美味しいのですが、掛け合わせると相乗効果で数倍のうま味を醸成します。更に、そこに脂分や香り、食感などが加わると、奥深いコクが生まれ、もっと食べたくなる美味しいさを作り出す方程式についても、科学的な根拠を踏まえて、お話しました。
日本だけでなく、海外で活躍する事も考えられる今、出汁についてしっかり学ぶ事は、料理人としての強みにもなると思います。
宗教的な食事制限や、ベジタリアン、ヴィーガン、ペスカタリアンなど、食べる物の嗜好や制限がある人もいます。それらの制限に、どの様に対応するかも、出汁を活かす事で、より美味しい料理を作る事が出来ます。
今回は、昆布出汁と豌豆豆(えんどうまめ)のペーストを組合せて味付けした出汁と、揚げ蓮根餅と焼き椎茸、針生姜、花穂紫蘇で、表現しました。
日本料理の料理人を目指さなくとも、日本的価値を活かしたいなら、出汁の引き方は、工夫して会得した方が、有利だと思います。食は、共に生き続ける為に、なくてはならないモノです。
料理を作ったりサービスするだけではなく、健全な一次産業の現場の事を知り、地域の活性化活動をしたりする事なども含め、食の仕事に関わる事は、とてもやりがいがあり、喜びもあり、存在意義にも繋がる仕事だと感じています。これから様々なスキルを学び、知識や経験も積み重ねられると思います。
けれど、有名レストランのレシピを覚えたから、また、上質な食材を手に入れられるから美味しい料理が作れ、有名シェフになれる訳ではありません。
自分の為ではなくお客様に召し上がって頂く料理を作るプロであれば、「誰の為に、何が出来るのか?を考えて、沢山の方々から求められる立派な人になって頂きたいです。湯木貞一曰く、”工夫して 心くだくる思いには、花鳥風月みな料理なり”。その場その場で、心がくだけ散るほど失敗しても、諦めずに工夫し続けて欲しいです。その事を料理から学んで欲しいです。レシピに、良いも悪いもありません。努力と経験の積み重ねる事で人間性が高まり、素晴らしい表現が出来るのです。『料理は、人なり』です。」
と言う様なお話もさせて頂きました。
そして、チャンスは生かす事です。どんな時でもどんな事でも、どうしようかな?と迷ったらやるべきです!
結果はともあれ、良い経験になるはずですから…。
もとい!自らで良い経験にするのです!その経験をプラスにする為の工夫が必要ですね!!
日々の料理作りの経験だけでなく、海外イベントでの体験や祖父-湯木貞一、魯山人の話など、鰹昆布出汁、豌豆豆のすり流し、昆布と鶏肉を使い、鯛の汐出汁の様な手順で作る鶏汐出汁など、試食しながら180分の講義をさせて頂きました。
取り止めのない話になってしまったかもしれませんが、未来の料理人達の刺激になり、お役に立てれば何よりです。
この講義は、私にとっても、これから料理を本気で学ぶ学生達と触れ合える貴重な体験です。
いつもお声がけしてくださる辻調理師専門学校の関係者の方、当日お手伝いをしてくださったスタッフの方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
最後に、料理人を目指す人たちにインフォメーションです!
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