2026.06.30
万葉の昔から、食べられていた川魚「鮎」。
1年でその一生を終える事から“年魚”、スイカや胡瓜のような香りがする事から、“香魚”とも呼ばれ、夏の日本料理に欠かせない食材です。
鮎はとてもデリケートな魚で、水質の良い清流でしか生きられず、釣り上げ後は、空気に触れただけで体色や身質が変わり、鮮度が落ちてしまう事もある繊細な魚です。
だからこそ、京都吉兆では、生きた鮎しか使いません。
氷締めとはいえ、死んでしまった鮎と生きた鮎とでは、味が全然違うからです。
芸術家であり美食家でもあった魯山人は、和知川(京都の北部、今の由良川)の鮎を絶賛し、この川の鮎を、生きたまま自身の東京の店「星ヶ岡茶寮」まで運ばせたそうです。
生きている事が、鮎の味の良し悪しに大きく影響する事がわかっていたからこそのこだわりです。
京都吉兆の各店舗によって、時期によって産地は、違います。嵐山本店では、出来るだけ、前に流れる保津川の鮎を、生きたまま入荷しています。
そして、鮎の塩焼きが美味しい理由のもう一つは、炭火で焼く事です。
炭火は燃焼時、水分を発生しないので、表面がパリッとし、遠赤外線効果で、じっくり中に火が通るので、身はふんわり仕上がります。
また、鮎の脂が炭に落ちる事により煙が上がり、これがスモーク効果を生み、特有の香ばしい風味となります。
鮎は、卵やトマトと同じ様に、1尾丸ごと食べられるホールフードです。
頭や皮の香ばしさ、身の甘さ、内臓のほろ苦さ、香ばしさと、うま味が詰まった骨。ホールフードならではの様々な味わいが楽しめ、美味しさがあります。
6月に入ると、各地の清流で鮎漁が解禁されます。
京都吉兆の各店舗では、焼き鮎を「魚籠(びく)」に盛り付けてお客様に提供する事が多いです。
釣ったばかりではなく、清流を作り泥吐きをした生きた鮎を、焼く直前に串をさし、炭火で、じっくり塩焼きし、「魚籠」を器に見立て、川辺の風情や獲れたての臨場感を演出するもので、吉兆の創業者、湯木貞一が考案した演出だからです。
そして、京都の南部、八幡市にある京都吉兆松花堂店では、夏の恒例企画「鮎の炭火焼きと生ビールの会」を開催しています。
鮎の炭火焼きと生ビール、そして特別料理を存分に味わって頂くだけでなく、テラスに焼台を設置し、たらいに水を張り、生きた鮎を入れ、つかみ取りをしてすぐに串打ちする、“活鮎”の実体験も出来るイベントです。
店舗以外では、宅配料理にてでは「鮎御飯」も人気です。
鮎の炭火焼きを丸ごと2尾使い、ご自宅でも夏の味覚を楽しんで頂ける様に仕立てた、季節の炊き込み御飯です。
鮎は、春の稚鮎、初夏の若鮎、そして夏の盛りになると、身も締まり香りも高くなります。
私は、8月頃の鮎が、最も鮎らしく、1番好きです。
鮎は川の石につくコケ(珪藻などの藻類)を食べます。
8月頃になると、この藻を旺盛に食べる為、鮎特有の爽やかな香り成分(ジエチルスルフィドなど)が最も強くなります。
また、体長20cm前後の立派な成魚でありながら、清流の強い流れに逆らって泳ぎ回る事で、筋肉質な身がキュッと引き締まると同時に、皮下や内臓の周りに良質な脂肪が蓄えられます。
更に、このコケに含まれる成分や、それを消化する為の消化液(胆汁など)が混ざり合う事で、独特の「ほろ苦さ」が生まれ、この苦味と、身の甘さ、脂肪が絡まり、コクを生み出します。
この香りと、身の質、脂、苦味の絶妙なバランスの鮎を、生きたまんま炭で焼く事によって、香ばしさや炭の香りが混ざり合い、鮎を食べる上での最大の醍醐味を感じます。
東京では稚鮎が人気ですが、是非、8月頃の脂の乗った本物の炭火焼きした鮎を召し上がって、日本の夏の美味を堪能くださいませ。
松花堂店|恒例イベント『鮎の炭火焼きと生ビールの会』開催のご案内
https://kyoto-kitcho.com/shokado-info/events/1342
松花堂店|初開催『鮎まつり ―串打ち体験と特別料理― 』のご案内
https://kyoto-kitcho.com/shokado-info/events/1353
オンラインストア「京都吉兆の贈りもの」 料亭直送料理の詳細・ご購入はこちら
https://shop.kyoto-kitcho.com/page/ryotei
