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榊美  
「このお団子、黄味餡よ。切り口がお月さんのようね」
橘
「薄の蒔絵で、形自体が真ん丸の月、
酒落てますな」


鈴木 「振出しは斑唐津ですか」

榊美  「このお団子、黄味餡よ。切り口がお月さんのようね」
鈴木  「振出しは斑唐津ですか」
橘   「薄の蒔絵で、形自体が真ん丸の月、酒落てますな」
橘    若女将のお点前で一服よばれるのは嬉しいですなあ。
若女将  どうぞお楽になさってください。ふつつかなお点前ですので、和尚様、あまり私のお点前はご覧になりませんように。
橘    ハハハ……。貴女もお気楽に。それにしても、籠から次々に名品が出てきますなあ。やあ、若主人、振出しを取り次いでいただいて恐縮です。
若主人  私はこれから、調理にかかりますので、あとの取り次ぎはお詰さんにまかせます。
橘    いやいや、堅苦しいことは抜きにして……、どうぞ行ってください。皆、あとのご馳走も期待していますのでね。
若主人  失礼いたします。
若女将  お菓子、どうぞお取り回しを。
橘    頂戴いたします。ほほう、月見団子ですなあ。鈴木さん、お先です。…菓子器の彩りが美しいですな。それからこの振出し、斑唐津ですかね。ここのところは、窯の中でくっついたのを剥がした痕のようですな。巧まずして景色になっておるね。

 

若女将  
「ふつつかなお点前ですので、和尚様、あまり私のお点前はご覧になりませんように」

鈴木  
「菓子器は色絵祥瑞ですか。色がすっきり鮮やかですね」

榊せ  
「色絵薩摩の可愛いお茶碗ですこと」


鈴木   菓子器は色絵祥瑞ですか。色がすっきり鮮やかですね。振出しは斑唐津ですか。
橘    干菓子を銘々盆でいただくのは珍しいですなあ。薄の蒔絵で、形自体が真ん丸の月、洒落てますな。しかし、この寸法は何とも可愛いい。
鈴木   お葉子、頂戴いたします。おや、真ん中にも絵があります。
橘    お点前頂戴いたします。若女将、お茶碗はのちほど拝見に出してくださいますか。それから、菓子器も。
若女将  承知いたしました。
榊美   お菓子頂戴いたします。鈴木先生、絵があるっておっしやってましたけど、お団子を取ったら、兎が現われました。
徳岡孝  器を、なかなか考えてますなあ。
榊せ   あら、本当。可愛い兎さん。
榊美   貴女、このお団子、黄味餡よ。切り口がお月さんのようね。
榊せ   製はどちらですの?
若女将  末富製でございます。
榊せ   お干菓子は枝豆と兎ですけど、これ伊織さんじやありません?
若女将  はい、亀屋伊織製でございます。

淡交 別冊 茶籠と茶箱 「月」に寄せて 亭主=徳岡邦夫 2003年 6月号

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