菅野
焼き物のお魚は当初、鰆でした。鰆の脂分は結構高く、鯖に近いのですね。そこで、鰆60gをカロリーの少ない魚に代えてはどうかと提案させていただきました。ご飯は湯葉を上に盛りあんをかけたものでしたが、他の料理でもたんぱく質が多いので、湯葉を除いたものにと、最終的に春の山菜を使ったご飯になりました。この2品の変更でカロリーはかなり落とせました。あと、真丈にマヨネーズを入れられるのですね。大変おいしそうなのですが、半量ぐらいを提案させていただいたところ、除かれるというご判断で。また、総カロリーの半分は炭水化物でと考え、ご飯を60gから少々の増量を提案させていたしました。
稲垣
患者さんはよく、会食などの席でひとりだけ残すのは難しいと言われます。最初からカロリーがわかればいいのでしょうが。
徳岡
カロリー表示をするレストランも多いですが、うちはやりたくないですね。レストランは非日常を味わって、活力を得る場所だと思うんです。カロリー表示は、世知辛い感じがします。
稲垣
そうですね。笑うだけでも血糖値が下がるという話もあります。こういう席では会話を楽しみながら、かつ、ゆっくり食べるのがいいですね。
吉兆さんのレシピを見ると、非常に多彩な食材です。調味料を抜きにしても50~60種類ある。繊維質も結構多かったですよね。
菅野
1日に必要な栄養要素の3分の1が、ほとんど取れてましたね。
稲垣
糖尿病には良いと言えると思います。日本料理で意外に高カロリーな食材はあるのでしょうか。
菅野
このメニューでは鰆でした。あと、高カロリーではありませんが、注意したい食材がお豆腐ですね。1丁で卵4個分ほどのカロリーがあるのですが、ヘルシーなイメージがあるので、いくら食べてもいいと思われてしまう方もいます。確かにいい食材なのですが、問題は量ですね。コレステロールのお話がありましたけど、イカ、タコ、エビ、カニ、貝類はカロリーは少ないのです。これも問題は量ですので、うまく使えばいいと思います。
徳岡
お造りのイカや鮪はどうなのか、お聞きしようと思っていました。
菅野
全然問題ないです。コレステロールも。
稲垣
コレステロールって、意外に食事で下げられないのですよ。自分の体でつくるものですから。
徳岡
あ、つくれるんや。
菅野
卵を一切食べなくても、高い方もおられます。
稲垣
コレステロールが高い患者さんには最初は食事で工夫するようお願いしますが、食事に期待しすぎると高いまま引っ張ってしまうのですね。薬は確実に下がりますので、早めに使ったりしますね。
雑誌:Islet Equality 11月号 35~39ページ / 刊行元:ノバルティス ファーマ株式会社