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日本文化創造プロジェクト嵐山本店 座敷「待幸亭」大改修
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蘇る 日本建築の美 MADE IN KYOTO

京都の匠たちによって蘇る「待幸亭」
丁寧な仕事、美しい所作、繊細な素材が織りなす座敷とは

このたびの改修には、日本画家、大工、表具師、漆職人など、さまざまな京都の匠が集結いたしました。素晴らしいご経験と技術を持つ、その職人方を紹介いたします。
京都吉兆 嵐山本店 座敷「待幸亭」

名匠と技

日本画家
森田 りえ子


数々の作品展で受賞歴があり、個展も多数開催されている、日本画壇において最も注目されている日本画家のお一人。

流水をイメージした「待幸亭」の天井画の老朽化が進み、どうしたらよいかを暗中模索していた中、これまでにもご縁のあった森田りえ子先生に相談をしたところ、新しい天井画を描いていただけることになりました。天井の張り替えに合わせて、床の間、襖、障子、壁など各所の改修を決意したのも、先生への相談がきっかけとなりました。

現在は、新しい天井画『天の川』の制作中。その全容は、改めて紹介して参ります。

《コメント》
「待幸亭」は嵐峡を借景とする奇跡とも思える贅沢な環境に佇む建築物です。続きの部屋の欄間は橋の欄干のデザイン。
何てお洒落なんだろう!

天井そのものが川の流れで、そこに架けられた橋、つまり大堰川 (桂川) と渡月橋に仕立てられているのです。それは同時に、天上を流れる天の川銀河にも置き換えられる事ができると思いました。

格天井の天井板は修復前と同じく板の上に和紙を張り、その上に金箔を施し、さらに極薄の和紙を重ねることで金地の輝きに和らぎを与える。実に手の込んだデリケートな技法で仕上げられています。

私はその上にドラマチックに流れる水文様を描くことにしました。銀粉とプラチナ粉と墨をミックスした絵具を垂らし込み技法を用いて流れの強弱を持たせました。その上から銀箔とプラチナ箔の砂子を撒き銀河の輝きを表現しました。

お食事の合間ふと天井を見上げると天の川!星空ロマンを感じていただければ嬉しいです。天の川を挟んで、二つの星が向かい合っています。織姫 (ベガ) と彦星 (アルタイル)。画家のちょっとした遊び心です。

日本料理を世界に誇る文化にまで押し上げた初代𠮷兆主人 湯木貞一氏の美学を受け継ぎ、日本文化の継承に意欲的に取り組んでおられる徳岡邦夫氏のお仕事の一役を担えることを光栄に思っております。

大工 (京都 匠)
伊藤 暢彦


天龍寺 宝厳院本堂の新築や瑞厳寺 陽徳院書院の新築など、京都の名だたる寺院に携わられてきた職人歴 21年の大工。

「待幸亭」の改修では、他の職人方と連携されながら施工全体の指揮をとり、格天井の改修や構造の下地造りもご担当。各所に、華やかすぎない本物の自然な美しさを引き出し、風合いを守るよう、現場を指揮・施工いただいています。

《コメント》
初めて「待幸亭」を見た時、天井は風化が進み、壁は割れているところもあり、全体的にダメージが目立ってきていました。

小屋組みがどのようになっているのか?
格天井をどのように止めているのか?
どのように吊っているのか?

先人の仕事はとても手の込んだもので興味深く、実際に見て自分も同じ仕事が経験できる貴重な機会となりました。
造りがしっかりしていて風格もある建築なので、これからも長く残ってほしい建物です。 そして、何よりこのプロジェクトに携われたことを、とても光栄に思います。

漆芸家
杉本 晃則


伊勢神宮での施工や、大丸松坂屋300周年記念蒔絵箱を代表作とする職人歴 24年の漆芸家。

「待幸亭」の改修では、襖・障子の漆の塗り直しをご担当。枠組みの漆の剥がれや欠け、劣化した部分を研ぎ落とし、下地を綺麗に整えたうえで漆を塗り直し、磨き上げの復元をしていただきました。

《コメント》
今回、先人の仕事を見ることで、その職人の仕事のクセが見えたりして、こういう人だったんだろうな、と思いを馳せることもありました。これは職人ならでは楽しさ、醍醐味で、時空を超えての体験は、貴重な経験となりました。

組み上がった襖に漆を施す作業だったので、角などを綺麗に仕上げるのに手間がかかり、技術も必要でした。京都らしいシャープな漆の美しさを再現するために、細部までこだわって塗り上げました。

元の状態に収まった襖を見て、漆っていいなぁ、綺麗だなぁと、自分の仕事ながら感動しました。(笑)

今、漆芸をやる人、漆を使った物も少なくなっていますが、漆はとても綺麗なものなので、もっと多くの人に知ってほしいと思います。縄文時代から続いている、とても素晴らしい漆の技術を、絶えないように次の世代につなげていきたいと思います。





唐紙師 (唐長)
千田 優希


二条城、京都迎賓館、桂離宮の唐紙を手掛けられた、職人歴 33年の唐紙師。

「待幸亭」の床の間には、以前も「唐長」の唐紙が壁紙として貼られており、今回も上品な薄墨の「七宝」文様を依頼いたしました。

《コメント》
床の間を元々の姿に戻す、というのが今回のご依頼。ただ、唐紙を作るだけではなく、床の間の空間を作るチームとして、大工、塗装、表具師の職人さんたちと情報をキャッチボールしながらの作業となりました。

床の間は、お軸をかける場所。唐紙は、目立ちすぎないように、一歩、二歩下がったものでないといけないと思っています。お客様の食事や話の邪魔にならないよう意識して制作しました。また、昼、夜で見え方が違い、正面と側面でも見え方が違うので、バランスも考慮して作りました。

数十年前、父や祖父が携わった仕事を、今度は私がやらせていただきました。江戸後期に彫られた板木を使いましたので、摩耗などを極力感じないよう加減しながら刷る作業となりました。

先祖が触れていたものを、自分もまた触れることができ、「唐長」と京都吉兆の歴史とご縁が続いていることに、とても嬉しく思います。先代が作った技術的なことだけでなく、関わる人との関係を伝えることも大事ですね。





表具師 (静好堂中島)
中島 匠


京都迎賓館、熊本城本丸、今日庵平成茶室の施工を経験されている職人歴 23年の表具師。
このたびは、床の間の壁紙や襖紙の張替えをご担当いただきました。

《コメント》
床の間に貼られている紙をめくり、下地を補修し、下張りを4回繰り返してから表張りを施しました。

襖紙の張り替えと縁の交換も行いましたが、襖は、傾きを調整しながら建て合わせる必要があったので、少し苦労しました。

古い建具なので、昔から伝わる技術も確認でき、とてもよい経験をさせていただきました。ありがとうございます。





表具師 (陽光堂)
伊藤 清人


日本画家・森田りえ子氏の南禅寺の襖や、京都近代美術館、市美術館の作品修理をご経験。職人歴 27年の表具師です。
天井画の下地作りをご担当いただきました。

《コメント》
森田先生の天井画のための料紙作りでは、金箔を貼っただけでは派手すぎてしまうので、金箔の上に、世界一薄い紙と言われる土佐の典具帖紙 [てんぐじょうし] を上に貼り金潜紙 [きんせんし] を製作しました。典具帖紙は、楮 [こうぞ] から作られるとても薄い和紙で、室町時代からあるものです。金潜紙は、昔の絵にもよく使われていて、透け感がちょうどよいと森田先生と京都吉兆様と共に選んだ伝統的な料紙です。

私たちの仕事は、ご依頼がないと作業をすることができません。特に箔押しの仕事は少なく、この先何年もないかもしれない仕事。後輩職人たちに見せる機会がないと、私たちの仕事は継承されません。今回のご依頼は、とても光栄で、嬉しい仕事となりました。





嵐山本店 座敷「待幸亭」大改修