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中世末に料理に革命をおこしたのが千利休であったとすれば、近代に日本料理を大きく変えたのは北大路魯山人氏と湯木貞一翁であった。・・・・・懐石はあくまで、茶の湯という風流な遊びのなかで、茶をおいしく飲むための料理であって、日本料理の本流ではない。いわば傍流にある懐石を、日本料理の本流に引き寄せたのが湯木貞一翁の革新だったのである。

熊倉功夫                        
「料理・茶の湯・風流---湯木貞一翁の世界」より


佐竹本三十六歌仙絵
在原業平 重要文化財
石山切(伊勢集)
伝藤原公任筆 重要文化財

煮物椀 鶉丸、焼餅、糸柚ほか

焼物 陣大巻 焼物 真名鰹西京漬
(器 織部四方手鉢 重要文化財)


湯木貞一 ゆき・ていいち

 明治三十四年(1901)、神戸の料理屋「中現長」の長男に生まれ、十五歳から料理修行を始める。二十四歳のとき、松平不味の「茶会記」で、懐石に出会い、感動を受けて、料理を一生の仕事と定めた。
 昭和五年(1930)に大阪で「御鯛茶処 吉兆」を開店。現在の「吉兆」グループの創業である。茶の湯の真情に根ざした料理は、季節を味わい、しつらえの演出が工夫され、「日本料理界は吉兆という風が吹いている」ともいわれた。その味と趣向を極め、気品のある日本料理は世界に誇るものとして、湯木は「世界の名物 日本料理」を標榜していた。

 戦後間もなく、すでにベーコンや牛肉、アスパラガスなどの新しい素材を取り入れ、松花堂弁当を考案するなど、つねに創造をつづけた。その一方で、「食の基本と最高の料理は家庭にある」とし、『暮らしの手帳』誌上の約二十年にわたる連載で「吉兆の手のうちも、洗いざらい」披露して、日本料理をまもり育てようと努めた。湯木の美意識の発露である美術品収集も有名で、茶の湯の道具を中心とした作品は「湯木美術館」に所蔵、公開されている。
 昭和六十三年(1988)、料理界では初めての文化功労者の顕彰を受けた。

 平成九年(1997)、逝去。享年九十五歳。


「吉兆 湯木貞一のゆめ」
風趣の人 生誕100年記念出版

湯木美術館編
料理・入江泰吉撮影
美術品は湯木美術館所蔵
B5判変形上製・ケース付・カラー96頁・本文192頁
定価:本体 9,450円(消費税・送料込) ※沖縄、離島のお客様は別途送料が必要となりますので、ご注文いただいた後、確認のお電話の際に合計金額をお知らせいたします

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