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阿波藍の産地として知られる、四国徳島県の上板町を訪ねた。
タデ科の植物、藍の収穫は梅雨明けから。刈り取って刻んだ葉藍に、地元で採れる天然のすくもを加えて藍建てして染料ができあがるまでに、丸々一年を要するそうです。
「ジャパニーズ・ブルー」と呼ばれる藍色は、まさに日本そのものの色。濃い水色から青、何度も染めを重ねた深い紺色まで、すべてが自然の色、私たち日本人の色です。
藍染した生地は堅牢になるうえ、防虫効果ももたらすそうですが、一面に広かる藍畑の緑色の葉から、これほど表情豊かな色彩と効用を見出した先人の智慧には驚くばかりでした。
私も実際に染めの作業を試みましたが、瓶から立ち上がる藍のつんとした香り、手にしっとりと馴染む染料の感触を体感するにつけ、私たち日本人はこうした手作業をとおしながら、暮らしにとって大切なものが失われつつあることへの危惧を。

零余子(むかご)、節子、鮑の酢物、エビの八寸、近くの山から採ってきた柘榴(ざ くろ)と楓、松葉をあしらった秋の一品。

この秋、私はイタリアで開催されるスローフード協会の催しに招かれ、現地で日本料 理を紹介することになっています。一期一会の短い時間のなかで、世界の方々に日本 の食のありようをより深く理解してもらうためにはどうすればいいのか−−−。今 回、阿波藍の里を訪ねたのも、日本の色、智慧の象徴ともいえる藍染の文化を何らか の形でイベントに活用できないかと考えたからでした。
漆や陶器といった器類は日本料理に欠かせない大事な要素ですが、何十人文もの食器 をイタリアまでもっていくことはできません。そこで登場するのが阿波藍の段染ラン チョンマット。和を演出する日本藍の話題は、参加者にも興味深いテーマになるので はないかと思います。
ご覧いただいている秋の八寸もイタリアで使う藍染からインスピレーションを得た料 理です。零余子(むかご)、節子、鮑の酢物とエビのつくりに、近くの山から採って きた柘榴(ざくろ)と楓、松葉をあしらいました。さてこのランチョンマット、イタ リアではどのような料理を載せてくれるでしょうか。

徳島県上板町にある「技の館」で初めて藍染めに挑戦する筆者。 一枚の染物からさまざまなインスピレーションが生まれる。

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