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連載第14回 樋口可南子のものものかたり



「おいしいもん、みんな知ってはるんやねえ!」撮影のため、大勢でおじゃましている私たちの姿を見て、常連のお客さまから、そんな声がかかります。
おいしいものがお好きで、ご自身で作られるお料理も、食通のかたがたから「絶品!」と評判の、伊賀にお住まいの陶芸家、福森雅武さん。福森さんが熱く推薦する乾物屋さん「ノムラ」を、樋口さんが訪ねました。
昆布に鰹節、干ししいたけのいい匂いが混じりあい、幸せな空気に包まれる店内で、まずは可南子さん、福森さんご推薦の利尻昆布をチェックです。
昆布をはじめとして、しいたけも鰹節ものりもすべて選りすぐりの天然ものばかり。笑顔のうちにも、ご主人の自信がのぞく説明に耳を傾ける可南子さんは、ふむふむとしきりに感心しています。
お店の棚にぎっしり積まれた段ボールから、北の海で育った昆布が顔をのぞかせています。「香深(かぶか)」と、産地の名前を印刷した箱からご主人が取り出してくださったのは、利尻昆布の一等品でした。
「昆布は寝かさないとあかんのです。梅雨の季節の湿度と、高温。これでうま味が増すんです」
冷蔵や冷凍といった低温による保存手段のなかった時代の、先人たちの知恵から生まれた食品。それが、乾物や塩蔵品です。水分をとばされ、ぎゅっと凝縮された本来のうま味は、「寝かす」、つまり熟成という工程を経ることで、「えもいわれぬ味」に完成します。
忙しすぎる現代人の生活に対するアンチテーゼとして、80年代の後半、イタリアで提唱されはじめた「スローフード」という考え方。私たちの国には、スローフードのお手本のような食文化がありました。
ゆっくりゆっくり手間ひまかけて作られた、乾物の昆布やしいたけ。そのぎゅっと閉じ込めたうま味をせっかちに引き出すことはできません。例えば、ぼこぼこした肉厚の笠が愛嬌のある、大分産の最高級の「天白どんこ」は、調理にかかるまで、30時間もの長い時間水に浸します。しんぼう強くもどしたあと、おいしいおだしに調味料を加えて、ことことじっくりていねいに炊いたしいたけ。お箸にはさむとずっしりと重く、噛んだ瞬間の、押し返すような力強い歯ごたえと、口の中に広がる滋味に、海や山の恵みを実感します。
乾物屋さんの野村さんを紹介してくださった福森さんから、可南子さんは、もうおひとかたのご推薦をいただいていました。野村さんで調達したおいしいお昆布を使って、すばらしい料理人のかたに、「お吸い物を習いたい!」
福森さんは開口一番「それなら、吉兆の徳岡さんでしょう」。
そんな訳で、京都吉兆の総帥ともいうべき、徳岡孝二さんにご登場いただきました。何年か前に本店の嵐山吉兆をご長男に任せられたとはいえ、毎日、超の字がつきそうにお忙しい徳岡さんに、少々無理なお願いをしてうかがったのは、南座花吉兆の厨房です。
30年もの間、徳岡さんの薫陶を受けられたという料理長のもと、白衣を着た、たくさんのかたたちが、実にきびきびと立ち働く厨房で、ちょっと場違いな可南子さんの前掛姿ではありますが、ご本人はいたって積極的。火力の強そうな業務用のガスコンロにかかったお鍋の中を、身を乗り出してのぞき込みます。
いい香りが立ち上るお鍋の内側に、うっすら小さな泡が現れはじめるころ、昆布が引き上げられました。沸騰させてしまっては、ひと晩かけて、じっくりしみ出したせっかくのうま味を、また昆布が吸ってしまうのだとか。昆布を引き出したあと、お鍋が沸騰したところに、「何グラムとか量ったことなんてありません。両手でこんなふうに・・・・・」と徳岡さん。びっくりするくらいどっさりの鰹節を入れて、ガスの火を消し、白い小皿で味見です。徳岡さんからもう一枚の小皿を手渡された可南子さんから思わず歓声が上がります。「おいしい!」拝見していると、素人目にはとても簡単に見える「おだしをひく」という作業。実は奥が深そうです。

小さな泡が立ちはじめたら昆布を取り出す どっさり鰹節を入れて 表面のアクを取り除いて おだしを布で漉し、寸胴鍋に移動

「昆布と鰹節のうま味が完全にひとつになっていて、すごく濃厚なのに、後味がすっくりしてる。やっぱり素人には無理そう、このお味は・・・・・」。少々興奮ぎみの可南子さんに、徳岡さんは無言の笑顔。「教えていただく」目的でやってきた可南子さん、素直に納得の様子でした。
さて、瑠璃色の切子の酒器を添えて用意してくださったのは、黒漆の丸盆にのせた銀溜のお椀。鱧と卵豆腐、それに吸い口は、ススキに見立てた青柚子です。
野村さんのご主人からうかがった、自然の恵みをいつくしむ心と、その恵みを余すところなく「おいしいもん」に変える、料理人の力。可南子さんの心に残る、特別に豊かな一日となりました。

上)鱧に卵豆腐。吸い口はススキに見立てた青柚子

 

左)お椀の蓋を取り、ニコニコ顔の可南子さん


花吉兆の厨房で。京都吉兆の統帥、徳岡孝二さん

どっさり入れた鰹節が鍋底に沈んだところでお味見

可南子さんも、お味見に参加します

「おいしい!!」と大感激
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