『吉兆』の洗練された店構え、料理、そしてもおてなしには、私たちが料亭をイメージする最上のアイコンのすべてが用意されています。それは時に、クラシックかつ普遍的に見えますが、実は常に時代を見据え、変化し続けてきたのです。
「あらゆるものが変化する中で、人と人の瞬間の接点だけはなくしていけないと思っています。逆に言えば、人から必要とされるから、接点は生まれるのです。そうなけば、淘汰されます。歴史があろうが、高級であろうが関係はありません。ですから、『吉兆』はお客様に利用される価値のある場所、そして社会に必要とされている皆さんの集まる場所でありたいと思っています。そして重要なことは、それを継続すること。何百年と続いて累積した有形無形の価値や利益は計りようがありません」
ただ漠然と食べて、寝て、息をしているだけでは明日ももっと頑張ろうという気力が湧いてこない。食、そしてアートやファッションには生きる希望を喚起する力があるという徳岡さん。本来、食とアートが高い次元で融合した空間が料亭であることを考えれば、料亭の創造には完成はありません。
今日の日本では、古都と呼ばれるクラシックな舞台・京都にあり、やや懐かしい和の意匠をまとった『吉兆』。日本料亭のアイコン的な存在を継承する一方、今日的な彩りや工夫を絶やさない。徳岡さんの嵐山『吉兆』には"懐かしい未来"が見え隠れするように思えます。
その空間のすべてにもてなしの心が行き届く『吉兆』の店内。水を打たれた涼しげな玄関。四季の移り変わりが感じられる庭など、日本の料亭のクラシックでありながら、古臭さをみじんも感じさせない。
京都吉兆
京都市右京区嵯峨天竜寺芒の馬場町58
tel:075-881-1101
/11:30〜15:00(L.O.13:00)
/16:30〜21:00(L.O.19:00)
/水曜定休 |