現代の日本料理界の風雲児、京都吉兆嵐山本店総料理長、徳岡邦夫(46)が「料亭の味を家庭で」との思いで、『春の食卓』(写真・山口規子 バジリコ 1500円+税)にそのヒントを集成した。
「どうせ作るなら、人のためになるもとを、と思いました。食への意識を高めてもらいたい、ラクに作れればそれでいい―それは間違っているということを伝えたかった。料理人は気持ちを料理に込めて出し、食べるほうは作り手のことを思う―そういう気持ちのやりとりが大切なんです」
本の中には、春の食材を使ったレシピが満載だが、それだけではない。
「野菜は炭で焼くのが一番おいしいんです。この本には炭の用意の仕方から後始末の仕方まで載っています。また、吉兆の調味料と家庭の調味料は違うので、レシピ通りに作っても味が違うということにならないように、うちで使っている鰹節、昆布、しょうゆも紹介しています」
生産者の意識を高めるのにも一役買いたいと言う。
「まじめにやっている生産者をみつけるのはたいへんです。農家にも中田英寿のようなヒーローが出てこないと。もちろん私も、料理界のヒーローを目指していますけどね」
夏、秋、冬とシリーズで出版される予定。