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2月6日午後、徳岡邦夫(47)=京都吉兆嵐山本店総料理長=は、京丹後市大宮町の「アグリセンター大宮」にいた。徳岡を中心に、京丹後市の「魅力創造プロジェクトチーム」が2日間の会議を開く。その初日だ。06年秋から徳岡が取り組んできた市の活性化支援、その成果を計る試作品が発表される。出席者はチーム所属の市職員、地元漁協組合員ら役30人。畳敷きの部屋、車座の面々の前に出てきた試作品は小型のサワラ、サゴシの加工品と、メスのズワイガニ、コッペを使った商品だった。偶然だが、地元で「雑魚」と呼ぶ安価な魚と、丹後を代表する高級食材の取り合わせだ。

京丹後市はサゴシ漁獲高で2年連続日本一。しかし地元では食べる習慣がなく、単価が安く利益が出ない。「何とか売れる商品に」という声に応じ昨年9月、徳岡は地元漁協で自らサゴシの加工品を試作した。好評を博したその日、嵐山に帰る車中で徳岡はつぶやいた。「地元の人は吉兆の名前を使えば売れると思ってるのかな?」。その苦悩は、この連載(昨年11月9日付)で書いた。
以来5ヵ月。テーブルに並んだ試作品は、漁協婦人部と市海業水産課の担当者が、二人三脚で試作に試作を重ねて作ったものだ。目標は「デパートで売れる商品を作ること」。担当者は「役所内の試食だと『普通より少し上』といわれましたが、評価が甘いかも知れません」と言いつつ、徳岡の前に皿を並べた。
「(プロジェクトの)考え方や進め方はすばらしい」。開口一番、徳岡は言った。続けて味付けや加工方法、商品開発の姿勢まで次々と問いかける。においがよくない、調味料の質は?コスト低下ばかり狙わないで。質の高いものを作りましょう。
話題が魚の質に及んだ時、徳岡が問うた。「漁船上で魚の選別を厳しくして、より鮮度のいいものを集められませんか?」答えたのは漁協の幹部。重要なことをあっさり言った。「漁のやり方を変えてみましょう。私らももっと努力できると思います」
プロジェクトチームの事務局担当、木村嘉充(49)=同市総合戦略課課長補佐=は「あの時ほど参加者の意識が変わってきた、って実感した時はない」としみじみ語る。「長年の漁の方法を変えるって言うんですから」。漁業、農業などの1次産業従事者は、加工や販売、宣伝など2、3次産業のあり方を考えて仕事をする。逆に2、3次産業の人は1次産品の現状を知り、最も価値を高める方法を模索する。「徳岡さんが言い続けた『意識の転換』が現実になってきた」。木村の顔がほころぶ。
サゴシが象徴した京丹後市の変化の予兆。実はコッペを使ったもう一つの試作品にも、別の変化の兆しが現れていた。



魚の質を上げるには?漁協や市の担当者に熱弁を振るう
=敬称略、つづく
 
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