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「嵐山の鵜飼」が幕を閉じる9月半ば、夏の賑わいが嘘のように、嵐山界隈は束の間の静けさを取り戻します。そんな時季に、屋形船で大堰川を上がりました。渡月橋から上は、稜線が急激に迫り、深山幽谷という言葉そのままの景色が続きます。時刻は夜。同乗の芸妓さんが吹く笛が、ときに鋭く、ときに優美に川面に響き渡ります。見上げると、松の古木に月が
架かり、たおやかなシルエットを、鮮やかに夜空に浮かび上がらせています。「これが日本か」。船に揺られ、たゆたうような時間のなかで、そんな感概に身を置いていました。迫りくる山は、やがて燃えるような紅葉となるエネルギーを内に秘め、月の光の下で静かに身を横たえています。9月は夏と秋のはざま。はざまだからこそ、思いもかけぬところで「日本」が顔を覗かせます。今月のプレートは緑と紫。この色の組み合わせも、私にとっては「日本」。琳派や桃山時代の屏風絵にこんな色彩があったような気がします。お店ではこの時季、締めとして牛蒡ご飯をお出しします。牛蒡の相方は鰻。この二つは、昔から相性のよい食材として知られています。楽しそうに飛び跳ねる兎の目に、このちょっと風変わりな牛蒡ご飯と鰻は、どのように映っているのでしょうか。
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株式会社大倉陶園
横浜市戸塚区秋葉町20
TEL:045-811-2185
京都嵐山吉兆
京都市右京区嵯峨天龍寺芒の馬場町58
TEL:075-881-1101 |
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