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 ”男と料亭” という接待に会食、どれをとってもビジネスの延長の場というイメージが強い。
とこが、京都となると少し様子は違ってくる。町中の料亭であっても料理や館のしつらえを目当てにするもの、舞妓や芸妓の舞を楽しむものなど、およそビジネスとは遠い世界。もちろん、この「吉兆」も嵐山という風光明媚なロケーションもあって、遊びに没頭する客は少なくない。

 このように京都の料亭には、東京やほかの街のそれとは一線をおいた、楽しみの世界がある。そして、そんな楽しみがあるからこそ、時代の波にのまれることなく、存在し続けているのかも知れない。
1回の食事に高額のお金と長い時間をかけることは、今の時代には簡単に手に入れられることではないが、かといって料亭は一見さんを拒否しているわけではない。むしろ、料亭を一見さんお断りと思って遠巻きに見ている人たちが多いだけで、もしその人たちが料亭本来の居心地のよさを知れば、そこに未知の美しき食空間があることに気付くだろう。
何だかわからないところと思われていたのが、料亭の魅力のひとつだったが、それを明快にすることで、料亭はさらに面白くなりそうである。そんな料亭の謎に少し手を入れ、開かれた和の世界を感じてほしいというのが京都本店の徳岡邦夫氏だ。
明らかに料理だけを売りにする店と違って、手入れされた庭や豊かな自然、付かず離れずのサービスや斬新な料理。芸術品に値する贅沢な器使い。そのいずれもが吉兆にはすでにあり、その多くが創業者湯木貞一氏の手によって完結されている。
「ただそれらを漠然ととらえるのではなく、今のお客さまの好みに合わせて趣向をとり入れるのが、私の腕の見せどころなんです」と徳岡氏は言う。そして、欲するものにこそ、応えていかなくてはならないという徳岡氏が今考えるのが、インターネットを使った情報公開。創業来、脈々とある「吉兆」のもてなしの心を公開することで、新たな客との出会いを模索している、というのである。大人の男として、どこまでその世界に踏み込めるか。政治家や財界人たちだけの秘密の場所にしておく手はないだろう。


上右:より深く料亭を楽しめるよう、日本文化を学べる会員制の京都塾(仮名)の開設も企画中という、徳岡邦夫氏。
上左:独自の審美眼をもつ創始者湯木貞一氏が好んだ魯山人の器に、朝掘りの筍をざんぐりと盛ったダイナミックな一品。
上右:螺鈿の花をちりばめた明月椀。ごま豆腐に塩焼きの明石鯛、干子をあしらった煮物椀。
上左:目にも満足を与えてくれる魯山人作雲錦大鉢。美術級品の器に出会えるのも料亭ならではの喜びだ。
時代の積み重ねを象徴する魯山人の鉢と 今、取り立ての春野菜たち  まさに 今、求められているのは新と旧の融合!!もしくは、対立する二つが互いに求め合う事が そして、譲り合うことが大切なのかも知れませんね。
客の好みをうかがいながら、素材の扱いや料理方法が決まる。油目を丸ごと塩焼きにしたダイナミックな焼ものにはマッシュ山芋が詰まっている。
花筏の金高蒔絵を施した花見重と魯山人の馬上盃。
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