徳岡 まぁいろんなことありますけどね。とにかく批評の多い人やけど、魯山人さんいう人は。食べ物に対しては全然違うもの持ってはったみたいです。
----- そうなんですか。お客さまも著名な方が沢山いらっしゃるでしょうが、海外のお客さんでは。
徳岡 もう減りました。昔は多かった。
----- どういう人がいらっしゃいました?
徳岡 いや、国賓とか、イギリスのマーガレットさんとかチャールズ皇太子とか。それから・・・亡くなったダイアナさんも内緒で、表向きやなしに、ダイアナさんのお友達で、ロンドンの新聞王の奥さんになってる人、その方がお連れするということでした。ほんなら、日本へ着いたら、もう五分置きのスケジュールでね、休みやるいう約束で皇太子についてきたのに・・・て。
----- いらっしゃれなくなった?
徳岡 そうそう。そんでストライキしてはったんや。
----- そうですか・・・残念でしたねぇ。社長も美人お好きなのに(笑)
徳岡 お見えになっても、うちの家内なんかは出れるけど、僕は出られへん。
----- でもご覧にはなりますでしょ。
徳岡 そりゃ・・・そうですねぇ。
吉兆の賓客
----- なにか、ロイヤルゲストでこの人がこうだったって言っていいようなお話はありませんか。
徳岡 そやけど・・・教えたらきりがない。
----- そうでしょうね・・・。
徳岡 一番びっくりしたんは、ヒマラヤの下の・・・。
----- ネパール。
徳岡 ネパールの皇太子がおみえになった時に、あれ、あんな事件の二週間ほど前に嵐山でお食事をされて、僕もご挨拶に出てたいそう喜んでいただきました。そしてネパールの歌をお歌いになってはしゃいでおられました。あんなことする顔の人ちゃいまっせ。穏やかなええ人で・・・。
----- つい数年前ですよね?
徳岡 いや、去年ですがな。
----- あ、そうでしたか。
徳岡 もうショックでしたわ・・・。二週間後でのことで。
----- そういう意味ではそれこそ世界の吉兆なんで、私にも・・・なんでしたっけ・・・、世界の名物料理?
徳岡 いや、世界の名物、日本料理。
----- 世界の名物、日本料理。
徳岡 それを父がね、昭和三十二年かな、はじめてヨーロッパに帝人の大宅さんに連れられて行きはって、その時にあちこちずっと回って食べてきて、ひとっつも感心するもの無かったんて。それやのに、世界の人はフランス料理が一番で、中国料理が二番で、イタリア料理が三番で日本料理なんか・・・って感覚だったんです。日本の政府も全然あかんのですよ。日本料理作ってる人で勲章もろたん親父だけなんですよ。
----- ほんとですねぇ。未だにそうなんですか。
徳岡 未だにそうです。辻留の辻嘉一さんは、出版で、ええ本出した言うことでもらいはって。そやから日本料理でもらった人って、親父だけなんです。ライシャワー大使の後を継がれたアルバート・クレイグ教授が、日本の文化が一番わかりやすいのは、嵐山の店やって。 |