T そうして実際に30代の方がホームページや雑誌でご覧になって来店され、ここからが「殻」を打ち破る本当のきっかけになるんです。若い方は食欲が旺盛ですし、日本酒よりワインが飲みたいとおっしゃる。また30代と60代のお客様が同席されて、同じ料理でいいのか悩むわけですよ。
N 僕なら薄味でさっぱりがいい、ということですか?
T そうです。要は求めはるようにしてあげよう、と。料理の二品目で「お味加減はどうですか」と必ずお聞きするんです。単にええか悪いかではなく、お席に5人おられたら5つの好みがある。だからお一人ずつお好みに合わせて薄くも厚くも切れます、味わいさっぱり、ボリュームはたっぷりにもさせてもらいます、と。当然「そんなことできんの?」と喜ばはります。そういう対応で料理を届けた時、作った人間を想像して下さいますでしょう。こちらとお客様が少し通じあえたような気がして嬉しい・・・。そこからですね。
N いま私たちの会社でも子供の数が減少して、「大人向けのお菓子」というブランドを立ち上げております。35年前と比べて子供は24%から14.4%に。一方でお年寄りは8%から17%。もはやお腹を空かせている人は少なく、「GIVE
ME CHOCOLATE」はもうない時代。先ほどのひじきではありませんが、お菓子も時代の流れに即した本物を提供してゆかないといけないと思います。
T 最終的には、お菓子も料理も喜んでもらえることが大前提。うちでは新しい材料や調味料を入れる時、スタッフと事務員さんなど全員に試食・確認してもらうんです。
N 実はね、ここへ来る途中、私たちの「大量製造のお菓子メーカー」と本物追求の「料亭」がどう結びつくのか、不安だったんです(笑)。でも徳岡さんのお話を伺うと、もちろんおいしいものを作るのは前提ですが、モノ造り、という意味では同じだなと熱くなりました。非常に楽しかった。
T 社会に必要とされれば存続しますしそうでなければダメ。人生は一回、何でも一生懸命やりたいです。
N 今日はありがとうございました。 |