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「都都逸に触れると
当時の気持ちのやり取りを想像させられます」

京都の花街・祇園の夜には、雅びな艶やかさがあります。夜な夜な粋人たちが舞妓や芸妓を伴って集うのが、『並木井』です。カウンターの中ではご主人の並木井さんが、三味線を爪弾きながら唄います。三十一文字に重ねて男女の情を俗語で語り聴かせる都都逸や、さらりと粋に情愛や世相を唄う小唄は、知的な言葉遊び。「昔から旦那衆が唄いに来られたものです。今はほとんど唄う人はいなくなりました」と並木井さんは回想します。「遊びというのは騙されること」と前置きしてから、遊びの奥義を瓢箪に例えて語り出しました。「入口に勝る難所の中くぐり。通りて奥の味こそ知れ」

「おいしさの中に工夫があって、

情熱的な愛を感じます」

牛肉の炭火焼きが基本のお店ですが、世界各国の食文化に着想を得た創作メニューがずらりと並びます。席に座ると、最初に出てくるのが野菜と味噌。この野菜がとにかく美味。「無農薬の野菜は、新鮮なうちは甘い。古くなってしまうと苦くなります。もちろん肉も野菜も同じように鮮度のいいものを仕入れています」と胸を張るご主人。素材の質の高さ同様、その手間のかけ方も尋常ではありません。センマイの灰色の表皮を丁寧に手作業で剥ぎ、真っ白になったものを刺身で食すなどはこちらではあたりまえ。「ホルモンは解体したばかりで、体温が残っているような新鮮なものを仕入れてきています」というご主人の言葉を聞きながら、料理に向かう真摯な姿勢を感じたのでした。


「人の間の隔たりを取り去って楽しめるのが

ワインだと思います」

「ワインに惚れてるんですよ」というご主人の岩田さん。石川県の民家を移築した『ワインクレージ』は、無農薬栽培のワインを含め、常時2000種類ものワインをストックしています。店名は、今ほどワインに関する書類もなかった当時、”ワイン狂”と言われるくらい勉強しなくちゃいけないという思いを込めて名付けたそう。こちらではワインを買うことも、飲むこともできますが、「知らない人は入ってくれないくらいアットホームなお店」とご主人は笑います。店の看板がひらがなで書いてある理由を問うと、「表に通りかかる小学生にも読めるようにしておいて、お酒が飲める年になったら着てもらおうと思ってるんよ」とうそぶくご主人でした。

 

「それぞれの時代の中で懸命に工夫し、次世代に繋げることができた自信を感じます」

千家の指定で茶具を作った十職のうち、釜師とされた大西家。京都三条釜座の伝統を受け継ぐ唯一の家となった大西家の所蔵品を公開しているのが『大西清右衛門美術館』。「茶道具の中でも最も種類が多いのが釜。しかし鋳造方法は、弥生時代に銅鐸などを作っていたころとさほど変わるところがありません」とおっしゃる第14代目大西清右衛門さん。木型で鋳型を作り、成分を調整した硬くて加工しにくい鉄を流し込み、表面に彫刻を施し出来上がる茶釜。力強い美しい茶釜の名品を鑑賞したあとは、お茶を一服いただくこともできます(有料)。

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