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食通家たちの反応は?
いよいよ大会開催日となり、1日目のシアター・オブ・グストを経て2日目のディナー ・オブ・テイストが始まった。ところが・・・・。
「実際には現地調達を予定していた食材が半分も揃わないという状況で。魚の代わり に肉を使うなど苦心して、どうなることかとハラハラでした」
ところが、世界で最も味にうるさい70人の食通家たちの反応は素晴らしい結果を表し ていた。徳岡や若手スタッフたちが職場のような調理場で最後のデザートまで出し終 わり抜け殻のようになっていたころ、ディナー会場は驚きと賞賛の声に包まれていた のだ。僕は正直、人間が料理を食べてこんなに驚いているス柄を見たのは初めてだっ た。
「ビエモンテ州のポルチーニ茸を使った日本料理の味付けをした茶碗蒸し、これが大 絶賛されたんです。卵というシンプルな素材を溶かしただけの料理で、プリンならわ かるが、暖かい料理で甘くないこんなにおいしいものが作れるのか、と」

大会で出された懐石メニューを特別に日本で再現してもらった。イタリアと日本の食 材が見事に融合した数々は、五感のすべてで味わいたい。(上段左)前菜・アンティ パスト・八寸。くり抜いたオレンジの中にひじき、手長えびのバジリコ和え(上段 中)日本から持参した漆の椀に胡麻豆腐を盛り付けた(上段右)これが徳岡の創造性 溢れる一皿。造りとして想定していた魚が現地トリノで見つからず、ピエモンテ産の 牛肉を使った徳岡風カルパッチョに。揚げた米とニンニクのスライスを添えているの が特徴(下段左)現地で大絶賛を受けたポルチーニ茸の茶碗蒸し(下段中左)ボラを 使ったフライ(下段中右)イタリアの栗を使ったご飯(下段右)デザートは水羊羹

徳岡の料理の魅力
なぜ徳岡の作る料理はおいしい、と評価されるのか。一般的な外国人の持つ日本料理 のイメージや実際に味わう料理となると、圧倒的にてんぷらや寿司が多い。しかし、 徳岡は世界中のいかなる素材を使っても、人体にとって本当に良い素材のみを使い、 それをシンプルに調理し、徳岡流に味付けする。いってみれば <日本料理> というよ り、固定観念に縛られない <徳岡料理> だ。日本人が食べようとも、おいしいと感じる 共通言語の作り方を彼は本能的に知り尽くしているのかもしれない。
ファーストフードに代表される画一的な味付けとは対極にある世界各地の環境や文化 に即した多彩な食材や味覚を守り発展させ、次世代の子供たちに伝えていこうとする スローフード協会の意義と、徳岡の料理、もの作りの考え方は見事に合致した。
「お客さまの喜ぶ顔を見て、やっと成功した実感が沸いてきました。次は来年1月に スペインで行われるレストラン「エル・ブリ」との競演。これからも日本の味、魅力 をしっかりと伝えていきたいと思います」
前を向き凛と進んでいく徳岡の目には、確かな未来が見えているはずだ。

2日目のディナー・オブ・テイストの様子。目が回りそうなくらい忙しい調理場で は、70名の世界でも最も味にうるさい食通家たちのために7皿のコース料理が作られ た。イタリア人シェフたちも徳岡の庖丁裁きを食い入るように観察。ディナー会場で は流し灯篭をイメージした中にロウソクが立てられた大根が、前菜に柔らかな明かり を灯した。テーブル横には日本料理を解説した印刷物も用意。京都の雰囲気を伝える ため、芸妓と舞妓の踊りがデザート後に披露された。初の日本料理からの参加だった ことや演出や味付けが斬新だったこともあり、徳岡の料理は大きな注目を集め、会場 からは驚きと称賛の声があがった。
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