長い間、ベールに包まれていた料亭「吉兆」だが、最近様子が違う。メディアで「京都吉兆 嵐山本店」の名をよく見かけるようになった。一見でもOK?シモジモの期待が高まった。この老舗料亭がベールを脱いだ訳は。
「以前から、一見さんお断りの店ではなかったんです。バブル崩壊後の厳しさの中、料亭という存在は世の中に必要ないのか、と。それじゃあかんと」。危機感を抱きながら、店の存在意義を探り続けたご主人がしたことは、創業者であり、祖父でもある故・湯木貞一氏を見直すことだった。
「人との関わりを大切にし、信頼を培ってきた湯木をバックアップする人たちがたくさんいたんです。これが吉兆の原点だったんですね」
それからのご主人は、内部を改革、世間への露出を高めていく。今は、記念日に、集まりにと、普通の人たちが楽しみに来てくれる。「社会が必要とするものを適正な値段で提供すれば、商売になり、継続するんです」。世界へ日本の食文化を広めたいと、さらに活動の場を広げつつある。