お米は新米の季節になりましたら、毎年、10種類ほどを取り寄せ、店のもの全員で食べ比べのコンクールをします。それぞれの意見を聞き、これが一番というものを選び、1年間使うお米を決めています。ですから、今年選ばれたからといって、来年も選ばれるとは限りません。やり始めてから十数年になりますが、おもしろいもので、最初のころはおいしいと思う米が十人十色でしたが、見た目のツヤ、香り、粘り、喉ごしなどと突き詰めていくうちに、おいしいと思うお米がだんだんと一致してくるのです。ここ3年ほどは新潟県の同じ産地のお米が続けて選ばれています。私どもが好むお米をつくろうと、それ専用の田んぼを用意していただいているところもあり、ありがたいことです。
板場でごはんを炊くのは煮方の仕事ですが、同じ産地のお米であっても、毎年、微妙に違いますし、季節によって水加減なども違ってきます。ですから、その都度、その都度が真剣勝負。お米に芯があるかないかという、そのどちらともいえない、まさにアルデンテの状態で炊き上げるのが理想です。ですから、お釜のふたを開け、お茶碗によそうときは、やはり緊張します。お客様にも最高の状態で召し上がっていただきたいので、お出しするタイミングを見計らいつつ、何回かに分けて、時間をずらしてごはんを炊きます。