世界中の食文化が一同に会し、トップ・シェフたちが腕をふるう、世界スローフード協会主催の「サローネ・デル・グスト」。イタリア・トリノで二年に一度開催される世界最高峰の食の祭典です。中でも、「ディナーデイト」は世界の美食家たちの厳しい舌をうならせるシェフだけが参加を許される権威あるイベントで、日本人で招待状を受け取ったのは、これまでたった二人だけ。そのうちの一人、京都吉兆嵐山本店の総料理長・徳岡邦夫さんは、全開に続き、二度目の出場という快挙を果たしました。サローネ・デル・グストへの二大会連続出場招請は、きわめてまれなことだといいます。番組では徳岡さん率いる吉兆の料理人の選抜メンバー「チーム吉兆」の奮闘と、日本料理の原点を、守り続ける京都吉兆の魅力を、ナビゲーターのはなさんと共に、ハイビジョン映像で美しくつづります。
普段なかなか足を踏みいれることのない、超高級料亭・吉兆の真の姿とは。そして、世界の中の日本料理とは。世界のグルメをうならせた、徳岡さんの食への情熱に迫る二時間です。
吉兆では器から掛け軸や花、室内の隅々まで一人ひとりのお客様への思いをこめて用意されます。食材については言わずもがな。徳岡さん自身が目を光らせ、素材から調味料にいたるまで、こだわりぬいて選びます。そんな徳岡さんのサローネ・デル・グストの初挑戦は二○○四年秋。主催者から与えられたテーマは「嵐山の再現」でした。
「なんとか日本文化的なものを伝えたいと、照明から音、芸者さんの舞と、演出を凝らしてはみたものの、料理としては満足のいくものではありませんでした」
世界のグルメから称賛され、スタンディング・オベーションまで起きながら、徳岡さんは納得しませんでした。何よりも大切な水や食材の違い、炭火を使えず、電気コンロを使用しなければならなかった苦い経験…徳岡さんにとって、今回の再挑戦はまさにリベンジでした。
「食材、飲み物、器や、ナイフ&フォークなどのセッティングもすべてイタリアのもの、皿の中だけで日本のテイストを感じてもらいたいと、現地に行ってから知った食材まで使いました」
そのうちの一つ、たまごダケを温泉玉子とバローロソースとあわせた「熱々温泉玉子」は、会場の美食家のみならず、現地のシェフにも大絶賛された一品でした。