「イタリアに行って考えたのは、日本料理って何だ、ということ。ここから日本で、ここからがイタリアとボーダーを決める必要はあるのか。目の前お方が喜んでくれる料理を、そこで仕入れられる食材で作るしかないんです。だから、あえて何だ、と言うならば、日本で作る料理が日本料理なのだと思います」
農作物を作る水そのものを含めて、素材のレベルの高さこそが、日本料理の真髄なのだと徳岡さん。
「ですから日本料理ということよりは、吉兆という店を選んでくださるお客様に対して、満足してもらえる料理を作ることを大切にしたい。お客様との対話の中から生まれ出てくるものが料理です。この先もいろいろな経験をしていく中で、表現の形は変わっていくと思いますが、ベースとしての思いは変わりません」
日本の食材の素晴らしさ、技術の高さは、もっと注目されるべきだし、知的所有権を含めて守っていかなくてはいけないという考えのもと、世界に吉兆というブランドを広めたいと語る徳岡さん。文化を「守りながら伝える」ための野望を秘め、伝統の地に生まれ育った食の風雲児は、チャレンジを続けていくことでしょう。