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プロフィール

この日、調理場には徳岡を含め11人の料理人がいた。最初の客が座敷に通され、うち10人が造り場、八寸場、焼き場、煮方、という持ち場にわかれ、忙しく立ち動く。一人徳岡は、調理場の中央に設えられたホワイトボードの前に立ったまま動かない。そこだけ時が止まったかのように。

「新しいものが食べたいって?」。誰にもとっもなく徳岡が尋ねる。かたわらで妻で女将の理津子(43)が答える。直接客に接するサービス部門のトップだ。「そう。それと野菜があんまりお得意じゃないんですよ」。小さく頷いて徳岡がボードに書き込み始めた。かに吹寄 はも焼茄子 鮑薄造……。ボードには10室ある座敷に迎える当日と翌日の客の名前、人数が書かれている。そこに徳岡が書き加えているのは翌日の客に出す献立。毎夕、徳岡はその日の料理と平行して、翌日の献立を組み立てる。

ボードに「鯖と白菜のミルフィーユ」といいう文字が書かれた。別の欄には「肉昆布〆」。「オリジナル。他にはない料理です」と徳岡が説明する。「鯖―」は塩と昆布でしめたサバと白菜をケーキのミルフィーユのように薄く重ねたもの。白菜は上の方は青い葉、下に行くほど白い部分を使う。「白い部分は糖度が青い葉の3倍くらいある。食べるうちに甘みが口の中にじわーっと広がるようにしてる」 「肉昆布〆」は、生肉に塩と山椒を振って寝かし、仕上げに昆布から出るとろみを丁寧に塗る。少量のからし、ネギ、マッシュポテトなどで彩ると、抽象画のような鮮やかな一皿になる。

「西洋は肉にチーズでうまみを付ける。日本は魚に昆布。両方とも肉や魚のイノシン酸と、チーズや昆布のグルタミン酸の組み合わせでうまみを出す。ならば肉と昆布の組み合わせもいけるんじゃないかってね」。わざわざとろみを塗るのは、直接昆布で挟んで生肉を変色させないためだ。

「お客様が同じ季節に二度、三度お出で下さった時。今までにないリクエストがあった時」。新しい料理が生まれるタイミングをそう解説する。そうして出来たオリジナルメニュー、一体いくつあるのか。「数えたこともないなあ。たぶん無限」とあっさり。書き残したレシピはなく、全ては徳岡の頭の中で、蓄えられた膨大な料理のイメージが取り出され、組み合わされ、変化を加えられて完成する。

「素材と調味料、だしの組み合わせ、火の通し方、スープの取り方なんかを、現実のお客さまの年齢、性別、好みなどを考えながら選ぶ。だからバリエーションは無数だけど、お客さまがいない時には出来ない」 日々生まれる"作品"にはほとんどまともな名前がない。「ミルフィーユ」は例外。以前、テレビで温泉玉子に赤ワインソースをかけた料理を徳岡自身が「邦夫玉子」と紹介した。「忙しくて、テレビカメラが回っていたのも知らずに適当に答えた。放送見てびっくりした」と笑う。同じ料理は今、単に「温玉」とボードに書かれている。

80年近くもの間、吉兆の名と価値を料理界の最高峰に維持してきた「だし」の味。そして世界中で徳岡しか作らない独創の料理。桂川の水音が聞こえる異空間の中では日々、伝統と革新の競い合いが続いている。その切磋琢磨の中で徳岡が目指すのは「食」が持つ「力」を多くの人に伝えること。その挑戦をしばし見つめてみたい。

 

 
静寂:緑に包まれた嵐山店前。そのたたずまいも吉兆を象徴するイメージだ

静寂:緑に包まれた嵐山店前。そのたたずまいも吉兆を象徴するイメージだ

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