サッカー、受験勉強、音楽、そして料理。徳岡邦夫=(46)京都吉兆嵐山本店総料理長=と話していて驚くのは、目標を定めてからの「短期間で結果を出す力」だ。例えば小学5年生の時、徳岡は水煙の五十b自由形で小学生の西日本11位になった。泳げるようになったのはそのわずか1年前だ。「泳ぐのが面白くなったら上達した」。ここでも力の源は「はまった時の集中力」にある。
目の前のハードルを次々飛び越えるように、課題をクリアしてきた少年時代。20歳になった徳岡は府立北嵯峨高校(右京区)を卒業、本格的に料理の道に入る。
「吉兆を継がせて頂きたいと思うようになりました。ついては条件があります」。妙心寺大珠院(右京区)で、徳岡は師である盛永宗興老師(故人)に言った。「おじいさんのそばで修行させてください」
その時の心理はこうだ。
「ドラムをやっている時はいずれスティーブ・ガッド(神様と称される米のジャズドラマー)を超えるつもりやたんや。料理人でも目指すのは世界一。それには料理の神様、湯木貞一のそばにおるのが一番やな」