京料理の老舗、京都吉兆嵐山本店の総料理長・徳岡邦夫さん(四六)が、旬の味を家庭で作って楽しむことを提案する料理本を今年、四季を通じて出版する。第一弾として、エンドウ豆ご飯など春の味覚六十六品を紹介した「嵐山吉兆 春の食卓」を今月出版した。「思いを込めて作られた料理をきちんと味わうことで、食卓から家庭のつながりや新たな食文化を生み出してほしい」と話している。
(文化報道部)
徳岡さんが料理本を出すのは初めて。「ラクしておいしく作るというレシピ本が多いなか『料理はそういうものではない』と感じていました。手際よくおいしく作るということは手順を省くことではない。一つひとつの作業を意味づけすることで、手順をおろそかにしてほしくなかった」と打ち明ける。
「春の食卓」では、旬の春野菜と魚を使って家庭の定番料理を紹介。ロールキャベツ、ハーブのちらしずし、タイのあら炊き。通常のレシピ本と違い、分量に細かい指示はない。「どんな料理にも決めの味はない。少しずつ工夫をして家庭での味を作ってほしい」。
その分、手順に込められた意味を解説した。たとえば、卵白は卵黄よりも火の通りに時間がかかるため、先に入れて卵とじを作る。養殖や切り身のタイは買って帰るとすぐに薄く塩をして冷蔵庫に入れると味が締まると。基準となるだしの取り方も詳しく紹介した。