―狂牛病(牛海綿状脳症)の国内での発生は、生産者にも消費者にも大きなショックを与えました。
狂牛病発生後、京都吉兆では、「おまかせ料理」に牛肉を入れるのをやめた。ただ、牛肉を食べたい人もいるので、すき焼き、しゃぶしゃぶといったメニューは残している。従業員にも、自分の食事に関心を持つように説明した。だが、問題を抱えているのは、牛肉だけではない。便利さやスピードを追求した結果、食べ物の世界に異変が起きている。狂牛病は、経済効率を最優先した「食」への警告のような気がしてならない。
―「食」が健全ではなくなったのでしょうか。
食材の仕入れのため、各地の農家を回っているが、自然で身体にいい食べ物を作ることが、とても大変な状態だ。例えば無農薬野菜を作り始めたある農家は、軌道にのるまで8年かかり、その間土地を売って生活したという。多くの農家が後継者難に悩んでいるのも、大きな問題だ。安全な食べ物を作る生産者を育てようとしなかった、日本のシステムのつけが、いま押し寄せている。