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京都吉兆嵐山本店の徳岡邦夫総料理長と、京都大大学院の伏木亨教授による「おいしさの科学」談義。話題はおいしさのメカニズムから、日本料理の要となるだしとうまみについて、そして変貌する日本の食文化へと展開した。

--外国人は昆布とかつお節のだしを生臭いという人もいます。

伏木:うまみというおいしさは世界共通ですが、うまみを持つだしの風味は各地の食文化で異なります。しょっつる、ニョクマム、アンチョビーなど個性的な風味は食文化ごとのおいしさですから、子供の時から食べ慣れないとそのおいしさは分りません。マウスでも離乳期までにかつおだしを食べさせると、大人になってもかつおだしが好き。だしのおいしさは教育されないと分らないんです。

徳岡:「風味」は口から鼻に抜ける香りですね。

伏木:そうです。舌にある受容体はうまみ1種、甘み1種、苦味が50種ほど。舌は微妙な味の違いを区別できません。一方、匂いの受容体は約380種あり、嗅覚は味覚よりはるかに繊細に区別し、記憶できます。おいしさは味以上に香りで決まるんです。

徳岡:私がだしの味を確認する時もまず香りをかぎます。その後、口に含みは鼻に抜ける香りを確かめます。加えて重要なのは「テクスチャー」、食感です。とろっと流れる、つぶつぶがはじける、さくっとかみ切れるなど、バリエーション豊かな食感がおいしさを倍増させます。

伏木:口の中は味覚より感覚の方がずっと識別力があります。理にかなっていますね。
 
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