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--日本の食文化が変容しています。

徳岡:もし日本の伝統的食文化が多くの人に必要とされず淘汰されているのなら、廃れるのは仕方がないのかもしれません。でも現実には、今の日本料理の形は失われないと思います。サプリメントで栄養補給は可能ですが、それだけで人は健康に生きていけないでしょう。

伏木:その通りですが、現実にはダイエット目的などでサプリメント中心の食生活の人がいて、逆に過食の人も多い。かつて栄養学者はすべての人に理想的な食事と生活習慣を指導しました。しかし現代の栄養学は、さまざまなライフスタイルを踏まえ、それぞれの人が健康になる方法を考える必要があると思います。

徳岡:別の問題もありますね。米とだし中心の日本の食文化は、日本の自然環境の中で生まれたもので、環境と食文化は密接にリンクしています。食文化が急変すると、環境との間で齟齬が起きませんか。例えばパンの原料の小麦粉は、日本ではほとんど作られていないでしょう。小麦が輸入できなくなった時、パン食に依存していたらどうなるでしょうか。

伏木:問題ですね。人間が必要な栄養素は人種を問わず同じなのに、土地が変わると食べるものが全然違う。食文化とは、人間がその土地の環境と、必要な食物との間で折り合いをつけてきた結果です。それを捨てれば、自前で食を賄えない国になりかねない。
また現代人は食べられる、食べられない、自力で見分けられなくなりました。パッケージに安全情報が記され、腐った食べ物を見る機会すらほとんどない。自らの舌で食べ物の善しあしを判断する能力が落ちた気がします。

徳岡:味覚全般の鈍化ですね。それは食に対する意識の低下につながり、人が生きる力を失うことだと思います。食べ物の本質的な機能は人間の心身を健康に維持することです。その意味で、私たち料理人が追求してる「おいしさ」とは、健康に食べるための指標です。だから「味覚音痴」は人間の心身にとって危うい状態です。

伏木:日本食は油脂が少なく、繊維質が多い世界で最も健康的なもの。そのおいしさを感じる力は、親が子に日本食の味を教育せねば生まれてこない。その事実も再認識したいですね。



昆布とかつおだしについて語る徳岡さん(左)と伏木さん=京都吉兆嵐山本店で
 
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