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今秋の刊行が決まった「ミシュランガイド京都・大阪版」。レストランの格付けで世界的権威を誇るが、伝統に裏打ちされた京の老舗では「フランスの基準で京の料理文化を評価するのはおかしい」との反発が根強い。一方、「京料理が世界に乗り出す足がかりに」と期待を寄せる店も。日仏の料理文化が静かに火花を散らしている。
格付けは、
訪店した調査員が▽食材の質▽調理技術▽独創性▽値段と味の兼ね合い▽
安定性を基準に決める。「歴史の長さは評価と関係ない。同意がなくても店を評価し、推薦する店を掲載する自由はある」(ミシュランガイドの総責任者ジャンリュック・ナレさん)との編集方針だ。
「創業百年以上の老舗が駅伝ランナーなら、毎年改訂されるミシュランは百メートル走者だ。経営の尺度や価値観がまったく違う」。1716年(享和元)年創業の「美濃吉」十代目当主佐竹力総さん(62)は一昨年末、格付け審査の協力要請を断った。
京都の老舗は代々の顧客を大事にし、伝統と「店の格」が密接に関係してきた。「京都市民の約六割は三代以上京都在住だから、経営も三十-四十年のスパン。地蔵盆に出るなど地域とのかかわりも大切だ」と佐竹さん。
老舗料亭では器やしつらえも含め一つの料理とするが、ミシュランの審査は「皿の中の料理だけ」。佐竹さんは「京料理には合いません」と指摘する。
数百年続く別の料亭も審査を断った。「日本の雑誌が国内で用いた基準で他国の料理を格付けしたら、その国の人はどう思うのか」
と疑問を投げかける。
一方、京都吉兆嵐山本店総料理長の徳岡邦夫さん(48)は「一つの基準。怖がることも依存しすぎる必要もない」と距離を置く。「親類」の東京吉兆が東京版で辞退し、義理を重んじて断ったが、再依頼があれば受けるという。「京都の料理文化も世界基準できっちり評価されることが未来につながる。それにはまず舞台に上がらなくては始まらない」。ただ「ミシュランは日本や京都の文化をもっと理解して」と注文をつける。
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