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の日のハイライトはやはり1962年、アンリさんが最初にテイスティングに参加した年の作品だ。62年物を世に出したのは1969年だったが、その頃は少しピンクがかっていたという。だが、いまグラスに注がれた液体は、深みのあるゴールドの、あたたかみをもつ色になっていた。62年は、シャンパーニュというより夢を見ているようなワインだと、アンリさんは言い切った。「シルキーで、そして成熟していて、力強さと、すばらしい酸味、つまりさわやかさが現存している。これは、僕より若い。62年は早いうちからよかった。早く開いたのにまだこんなに若いのにはびっくりです」
そう言ったあとアンリさんは、ただし、このワイン造りのとき自分は見習いの最初で、ほんのちょっとだけ手伝ったくらいの・・・・と謙遜を面に浮かべてつけ加えた。律儀な農業人の貌が、またもやアンリさんの表情にあらわれた。


私は、そこに供された四つの作品を、ただただ愉しく味わい、料理との極上な組合わせを堪能した。こうやって、四つの作品を行ったり来たりして味わってゆくうち、”バランス”という言葉のもつ奥深さと凄みを、何度もかみしめさせられた。その高度な”バランス”こそが、品のある自己主張の核になっているにちがいなかった。”バランス”こそ”シャンパーニュの不思議”の象徴だ・・・・私は勝手にそんなことを思った。
私は、唐突に、歌舞伎舞台における雪を思い浮かべた。歌舞伎の雪では、「雪音」といって大太鼓が打たれる。無音の雪をあらわす太鼓の音が、本物の雪よりも紙の雪を際立たせ、そこに何ともいえぬ無常感がただよったりする。グラスにかすかに陽の光が射すとき、そこに注がれたシャンパーニュから立ちのぼる細かい泡にニュアンスが生じ、さらに「雪音」がかぶさるような錯覚が生じたのだった。


また、グラスに注いで少し時が過ってみると、香りも味わいもさっきとは別もののように変化している。そのことに不意を突かれたような快感が湧いた。そんなこともまた、造られた年の気候がかもし出す趣きなのだろう。その時の自然の、ながい時を見込んだ作品づくりの結果ということかもしれない。ひとつの予感が次の予感を誘い出し、その先にまた次の予感を呼ぶ・・・・そうやって前に進んでゆくようなグラスの中の変化を、アンリさんは山登りにおける景色の変化にたとえていた。これで終わり、これで決まりというもののない、頂上のない山登りのようなイメージを、私はその話を聞きながら思い浮かべていた。
73年と、76年のコントラストも、この宴での話題を引き出した。1973年はフランスでもシャンパーニュ地方に限って、天候がゆれうごかない”規則的”な年だった。そんな年につくられた73年には、洗練されたシャンパーニュというクラシックなイメージが出ている。はちみつのような香りがあって、やはり”バランス”の神秘を感じさせる味わいだった。それに対して1976年はおそろしく暑い年で、収穫が例年より一ヶ月も早かった。その結果、成熟が過剰といってよいくらいの、パワフルでリッチなワインとなった。これにはコーヒーやチョコレートのアロマが生じている。この対照的な二つの作品を擬人化して語り合えば、それだけでにわかに宴に賑わいが生じるのである。
障子を透かした陽の光が、小宴の座に射し込んでくる。障子に映る庭の悠久の時のようにも感じられ、一瞬のごとくにも思えた。フランスのシャンパーニュで造られた白ワインと、京都嵐山「吉兆」の料理の絶妙の出会いが醸し出すさまざまに、私はすっかり酩酊していた。グラスの中で、極上のバランスから立ちのぼる小さな泡が、果てしなくリズムを刻んでいる。目の前にはその造り手であるアンリ・クリュッグさんが、偉大なる農業人の佇まいをもって坐っている。私は、四つのグラスの中にたゆたう液体をのぞき込んで、「シャンパーニュの不思議に乾杯!」とひそかに叫んでいた---。

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