A Passage to the Ryotei
稀代のショコラティエと3代目
<京都吉兆>
主人、食の未来を語る!
食後のひととき、徳岡邦夫さん登場。大満足のエヴァン氏と、予期せぬ熱くシリアスな話し合いになりました。
エヴァン(以下H) 今日のランチでは、いろんな発見がありました。私の得意とする分野のお菓子も素晴らしかったのですが、驚いたのは素材です。素材のクオリティーの高さ。そして、その素材の価値をさらに高め、背景にある自然まで感じられる料理に昇華していた。ご主人の自然に対する尊敬の念が表れている料理でしたね。それは、私のフィソロフィーにも通じることです。どうやって、これだけのいい素材を見つけ出しているのですか。
徳岡 素材ばかりではなく調味料なども、できうる限り生産者から直接取り寄せるようにしています。分からないことも多いので、時間を作っては生産者を訪ねていき、お手伝いしながらいろんな話を聞かせてもらっています。
H そうすると、素材をよりよく理解できるようになりますよね。
徳岡 農家の苦労も分かる。私のところでは無農薬野菜を使っているのですが、今、京都で完全無農薬の農家はたった2軒しかありません。手間ばかりかかって見合わないからです。でも、彼らはいいものを作りたい一念で頑張っている。
H 農家の苦労はフランスも同じ。私も常に作り手と話をするようにしています。私の作るチョコレートをお客様さまがおいしいと言ってくれるなら、その大半はカカオを作る人たちのおかげなんです。ところが、カカオの生産者たちは、もしかしたら、京都の野菜を作る人たちよりも苦労しているかもしれません。渡しが使うカカオはカリブ諸島から来るのですが、そこのカカオはすべて仲介業者が押さえているため、プライスコントロールされているんです。だから、カカオ農家は毎日の食べ物にも事欠く生活を強いられています。
徳岡 私はそういったことを大いに伝えていくべきだと考えています。
H まったく同感です。こういった機会に、ジャーナリズムに発信してもらうことは大事なことだと思います。私は、あまりにも虐げられているカカオ生産者を思い、それを原料に作ったチョコレートにその人の名前をつけました。
徳岡 なるほど。それはいいアイデアですね。
H お客さまは好奇心旺盛ですから、このチョコの名前はどういう意味ですか、と尋ねます。そうすると、店員がその生産者のことを説明できる。そうやって、彼らの思いを少しでも伝えることができたら、と思っているんです。
徳岡 日本はいつの頃からか、目に見えるものにしか価値を見出さなくなってしまいました。目に見えないパッションなんて、感じられなくなっている。このままでいくと、今に、いい素材を作ってくれる人がいなくなるのでは、と不安になります。これは、教育環境も影響しているのではないかと考え、小さな子供にもっと食に興味を持ってもらえるよう、話をする機会を持っています。小学生たちに、まずは自分たちの食べているものに興味を持ってもらって、その食べ物がどこから来ているのか、どんな人が作っているのか想像してもらう。そこから、生産者へと思いつながっていけば、と思って続けています。
H 小さなムーブメントのようですが、大きな結果につながっていくことだと思います。京都は日本の文化と歴史が詰まった場所。その中でも、ここ
<吉兆>
で過ごした時間は、濃厚で有意義でした。その上、こんな話ができるとは。なんだか、京都とパリが近く感じられました。いつの日か、本物の食材を使って、お菓子バトルをやりたいですね。ここで最後にいただいた和菓子の、フレッシュな素材感にすっかりまいってしまいました。ご馳走さまでした。
徳岡 ぜひバトルやりましょうね。ほんとうに今日はありがとうございました。
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Jean-Paul Hevin
Born in 1957.Former chef-patissier at Nikko de Pris. Opened
his own shop in Paris in 1988 and now has shops in Shinjuku
Isetan and other in Japan.
ジャン=ポール・エヴァン 1957年生まれ。24歳でニッコー・ド・パリのシェフパティシェに。84年〜85年来日。86年MOF取得。88年パリに自分の店を開店。日本では伊勢丹新宿店他。 |
Kunio Tokuoka
Born in 1960. Grandson of the founder of Kitcho, Teiichi Yuki.
Began work at Arashiyama at the age of 15. Currently head
chef at Kyoto Kitcho.
徳岡邦夫 1960年生まれ。
<吉兆>
創始者、湯木貞一氏の孫。15歳で
<嵐山吉兆>
に弟子入り。大阪、東京でも修行。祖父の料理の精神を学ぶ。
<京都吉兆嵐山本店>
料理長。 |
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Le grand shocolatier vs. the head shef of Kyoto Kitcho!
After the meal,Kunio Tokuoka, the third generation owner of kyoto Kitcho,
chats with Mr.Hevin.
H I made a number of discoveries during
lunch today. I found the sweet, whitch is my speciality was great, and
moreover, I was impressed by the quality of the ingredients. You have
chosen high quality ingredients and have elevated them further up by creating
dishs through whitch we can sense the nature from which they came. That
is exactli in keeping with my philosophy. I wonder where you find such
high quality ingredients.
T I try to buy seasonings as well
as the material directly from the peaple who actually grow or produce
them. I also try to visit them as much as I can and learn from them by
helping their work.
H I see, that is a wonderful way to
better understand the material.
T In that way, I also learn how hard
their work is. I use organic vegetables for my dishes, but there are only
2 farms that grow organic vegetables in Kyoto.
H The hard work you have just mentioned
applies to French farmers too. I also try to keep in touch with the farmers.
If my customers think my chocolate is good, the applause should go to
the cacao farmers who contributed the most. But the cacao bean price is
controlled by the brokers who monopolise the market, and the farmers are
forced to live at subusistence level.
T The public should hear more about
these kind of issues.
H I agree with you. Actually this
is a great opportunity to make the public know about the problem the farmers
are forced to face. I named one of my chocolate creations after the person
who produced the cacao bean which I used for the chocolate.
T That is a wonderful idea!
H My customers are very inquisitive,
our shop assistants can explain about the situation of the cacao farmers.
That way, I hope to contribute to a public awareness about the hardships
they are facing.
T I fear the time will come when there
are no people who grow and produce good material. I thought the way that
children are educated has contributed to this worrying situation, and
I am trying to take the opportunity to talk with small children.
H It might seem to be a small movement,
but I belive that eventually it will deliver big results. Kyoto is the
sentre op culture and history in Japan, and the time I spent here was
very meaningful to me. The distance between Kyoto and Paris seems to have
shrunk for me. Someday I hope to compete with you in creating sweets using
excellent ingreadients.
T I am looking forward to the competition
too! Thank you very much.
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