世界一の大富豪、ビル・ゲイツの個人資産は510億ドル。彼は蓄えた慈善資産の大半を社会に還元している。欧米の成功した慈善事業の中では既に常識となりつつある社会貢献(フィランソロピー)。これからは、日本の経営者も社会貢献してこそ一流です!?
ビル・ゲイツが妻メリンダと設立した慈善団体、ビル・アンドメリンダ・ゲイツ財団。その総資産は360億ドルと世界最大。彼は財団を通じてて莫大な寄付を行っている。例えば2005年、彼は国際団体「ワクチンと予防接種のための世界同盟」に7億5000万ドルを寄付。このような活動が認められ、米『タイム』誌の「世界の貧困、疾病、格差の解消に取り組んでいる」人物としてメリンダとともに「パーソンズ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
企業による社会貢献活動や慈善事業、寄付行為、NPO活動などを指すフィランソロピーという精神は、実業家にとって欠かせない資産のひとつだ。「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーはカーネギーホールなどの文化遺産を多数残した。メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館は「石油王」ジョン・ロックフェラーや「金融王」JP・モルガンらの寄付や寄贈によって発展を遂げた。パブロ・ピカソやジャン・コクトー、モーリス・ラヴェルなどの絵画、詩、音楽といった芸術分野で歴史に名を残した天才たちを支援したのは、シャネルの創業者、フランスのガブリエル・ココ・シャネル。優秀な事業家の条件には、博愛精神を持つフィランソロピスト精神も必要なのだ。
税制面での優遇措置が整っているアメリカでは一定条件を満たし、非営利団体と認められた機関や団体は無税になる。これも慈善事業を行う動機のひとつだ。とはいえ、税金対策のために寄付活動を行っているという見方だけでは慈善事業を正しく捉えることはできない。なぜならば、社会貢献が企業の慈善事業のひとつとして成立しているからだ。
マイクロソフトの場合、「全ての机に、家庭に、コンピュータを」という社是を掲げ、ITスキル支援やソフトの無償提供などデジタルデバイドの解消にも力を入れている。誰もが情報にアクセスできる環境が生まれれば、地域や社会格差の改善にも大きく影響する。一方、世界中にPCが普及すれば、自社製品の売り上げが跳ね上がる計算もある。
社会貢献はコストではなく、収益や集客効果、宣伝効果、顧客発掘、競争力の向上につながるという考え方がフィランソロピーの精神だ。人を幸せにすることで自分も幸せになり、さらなる企業発展にもつながる。