みなと「ともに」生きることが大切。
自分だけではなく、みなとともに生きる。この「ともに」というのが慈善事業の核。一方的に与えるのではなく、ギブアンドテイクが成り立ち、互いの関係を継続・発展させていくことで、「ともに」幸せになれる。
バブル崩壊後、料亭の経営は厳しくなり、お客様も激減。料理をもっとおいしいものにしようと試行錯誤してもなかなか業績があがらない。そこで気がついたのが一次生産者の方々とのコミュニケーションの大事さ。他の人の気持ちを理解せずに、自分だけがよくなろうと思っても、うまくはいかないですから。
野菜や魚、肉だけではなく、調味料とか水とか、食べ物ののベースの部分は基本であり料理には欠かせない。自ら現場に向かい作る側の体験を共有する。そこから、自分は何ができるのかを感じ、お客様に必要とされる料理を作れることにつながる。
また、生産者の大切さ、すばらしさを第三者に伝える教育もしています。幼稚園に行きこの料理はどこで、誰が作ったということを教える。ご両親や先生にも伝えています。そうすることでゴハンが好き、おいしいという以上に、生産者の大切さも伝わりますから。生産も加工も消費も、すべてがつながっている。ともに生きていることを伝えていきたい。
徳岡邦夫
京都吉兆嵐山本店総料理長 1960年生まれ。
「吉兆」の創業者・湯木貞一の孫にあたる。白陵高校中退後「嵐山吉兆」に弟子入りする。2年後北嵯峨高校へ入学。卒業後僧侶生活を経て大阪の湯木氏のもとに再入門し、料理の修行をする。さらに大阪吉兆、東京吉兆でも修行を続け、95年から、京都嵐山吉兆の料理長として現場を取り仕切る。2004年10月イタリア・トリノにて開催されたスローフード協会世界大会に日本料理界では初めて招聘された。06年10月にもさいど招聘されている。