祇園祭のただ中で
味の祭りが開かれる。
七月の京都は祇園祭一色に染められる。おおげさな例えではなく、一日の神事始め”吉符入り”を皮切りに、二十九日までなにがしかの行事が催される。佳境となるのは十六日の宵山と、翌日の山鉾巡行。この時期に他の地方で開かれる勇壮さを競うような祭りとは異なり、古都の雅趣に富んだ絢爛さは動く絵巻物の呈をなす。
セブンシーズクラブの「ドンペリニヨン・ディナー」。山鉾に駒形提灯が灯をつける宵山の日に、京懐石の老舗「嵐山吉兆」で行われた。
刻々と暮れていく嵐山。さすがにここまでは宵山のにぎわいも届かない。緑に群れた嵐山は、少しずつ藍の色へと移り変わり、やがて墨がみじむように闇に沈んでいく。ひぐらしが密やかに居場所を伝えようと鳴くが、聴く者にとっては山の襞のどこで震えているのか、知りようもない。