今回はそういう取り組みの一貫から、長澤さんの畑を訪れ、濁りのない純粋な味を体験して もらう「夏休み特別企画」が催された。「ナスってこうして茎にくっ付いてるんだ」「茎も紫や」と、
畑でワイワイ楽しむ子供たち。それにも増して、「ナスは房の下の白色がはっきりしているほう が美味しいです」と、長澤さんに見分け方を教わるや、大きくうなずく興味津々のお母さん方。
オクラも美しい花が咲くのを見、有機での堆肥の与え方など心のこもった講義があった。その 後、いよいよ食事である。子供用の特別仕立てながら、そこは吉兆の仕事。バカラのガラス器
に先付のトマトのシャーベットが出されると、子供よりもお母さんから歓声が沸いた。地鶏の出 しに濃密なトマトをすり合わせ、温度卵とニンニクを利かせた煮物椀ならぬスープは、子供た
ちに大好評。先ほどのナスは炭焼きされ、万願寺とオクラの焼野菜になって登場した。「おい しい。ジュワーと味が出る」「器もおしゃれ」と子供から意外な感想も飛び出した。水物まで全
8品の献立だが、ダイレクトに感想を伝える子供の様子に、「キチンと作ろうという気持ちの再 確認ができますね。味を意識する大切さが、伝わったかな、と思います」。素材の顔・作り手
の思いが見える料理は、こうして人々の記憶に刷り込まれる・・・その現場の記録となった。 |