ただ、私が料理人として感じていることは、料理と器の組み合わせは「気持ちを伝える」ことにほかならない、ということです。料理だけではなく、食事の場所、雰囲気も、気持ちを伝えるために大切な要素です。吉兆では、来て下さるお客様に「食事を通して感動してもらいたい」「心から素晴らしい時間を過ごしてほしい」という気持ちを料理、器、接客、雰囲気などによって表現しています。
同じように、家庭の食卓でも、家族を喜ばせたい、食事を楽しんでほしい、という気持ちを、料理と器で表現することができます。ところで、食事の喜びとは何でしょうか。おいしいものを食べたとき、人はうれしくなりますよね。そのうれしさを本当に実感できるのは、誰かと「これ、おいしいね」「いい器だね」と気持ちを共感し合ったときなのです。一人で食べても、これは体験できません。ご家族でも、夫婦同士、家族同士で「共感する」ということを念頭において、食事を考えてみて下さい。