両方ともまとめて「やきもの」と呼ばれていますが、このふたつには違いがあります。まず陶器ですが、こちらは粘土が原料。吸水性があり、素朴な土の感じが残っています。代表的なものに萩焼、唐津焼などがあります。磁器は、石を砕いた粉が原料です。陶器より高温で焼かれ、吸水性もありません。見事な絵付けが施された作品が多く、有田焼、伊万里焼などが有名です。見分け方は、たたいてみること。陶器は鈍い低音ですが、磁器は金属音のような響きがあります。
陶器には吸水性があります。料理の水分や油分を吸って、色が変わってしまうものもあります。ですから、使う前に水かぬるま湯に30分程度ひたし、あらかじめ吸水させておきましょう。魚などを盛り付ける場合は、こうしておくと、器ににおいが移りにくくなります。なお、陶器も磁器も、洗うときはなるべく洗剤を使わず、ていねいに洗ってください。
やきものの中で最も古いのは「土器」。その始まりは縄文時代にまでさかのぼります。粘土で形をつくり、800度程度の低温で野焼きするというシンプルな製法ですが、土器ができたことで煮炊きができるようになり、人間の食生活が大きく変わったと言われています。このように、土器は「食べること」と密接なかかわりがあったため、土器づくりもまた、女性の仕事だったようです。ちなみに、土器の製法で作られている日用品が、植木鉢。土器は吸水性が高く、水漏れしたりするので、食器としては使えませんが、ガーデニングでは大活躍しているやきものといえます。
特に金や銀を使って装飾してある器は、電子レンジに入れると、金属がスパークしてパチパチ破裂音が起こり、せっかくの絵柄がとれてしますことがあります。料理をレンジで温めるときは、専用の器を使いましょう。オーブンにいれるのも、なるべく避けたほうがいいでしょう。陶磁器は、もともと高温でやかれているので、熱には強いものですが、電子レンジやオーブンによって、急速に加熱されたり冷やされたりしていると、次第にもろくなり、急に割れてしまうこともあります。
やきものは「茶道」と関係の深いものです。最高のおもてなしをするため、高価な茶器が茶の席に供されることもめずらしくありません。ですが、ただ高価なものが好まれるわけではありません。茶道には季節ごとにいろいろな行事がありますが、抹茶の新茶が出回る11月が茶道にとっては新年のようなもの。その前月である10月には、残り少なくなったその年の茶を惜しむ「名残の茶」という行事が開かれます。名残の茶でユニークなのは、欠けた茶碗を使ってもよいところ。過ぎ去るものに思いをはせる、という意味で、あえて壊れたもの、傷のついたものを使います。壊れてもなお愛着を持ち続ける、なくなっていくものを惜しむ、という、情感豊かな茶事といえるでしょう。