言葉としてのブームを超え、すっかり定着した感のある”スローフード”ムーブメント。しかしその実態となると、きちんと知る人は少ないかもしれない。ここではまず、歴史を紐解き、活動の内容を把握しよう。 スローフードの機運は、1980年代北イタリア、ミラノ郊外の田舎町ブラから盛り上がった。当時、ローマにマクドナルドのイタリア第一号店ができ、安全性を軽視した食の氾濫に危機感を募らせた人々が、地域の食を見直し、人が豊かに生きていくうえで欠かせない「食の喜び」を取り戻すためにと提唱されたものだ。1986年には正式にスローフード協会が設立。ちなみに協会のシンボルマークはスローな歩みの象徴、かたつむりだ。
運動の趣旨は、具体的には3つ
1.消えつつある郷土料理や質の高い食品を守ること。
2.上質な素材を作り続ける、小規模な生産者を守ること。
3.子供たちに正しい味覚を伝えていくこと。
こうした、崇高な理念を掲げた運動は、各地で賛同を得、活動の輪は瞬く間に地球規模に広がっていった。20年を経た今、世界45カ国に800以上のコンビビウム(イタリア語で共生という意味。支部のこと)が設立され、それぞれ活発に活動を行っている。