地球最後の日に何を食べるか。日本人なら、炊きたての白米をあげる人が多いはず。私たちにとって米は食の原点なのだ。名料亭「京都吉兆嵐山本店」でも然り。バブル崩壊後、料亭の存続が危うくなったとき、主人・徳岡邦夫さんが内部改革を断行。食材の見直しもその1つで、最初にしたのが米選び。10軒の農家から米を取り寄せて炊き、スタッフ全員でブラインド試食してその年の米を選んだ。以来、「京都吉兆」は毎年、同じやり方で米を選んでいる。料亭の米選びはこのくらい真剣なものだ。
さて、選んだ米は、お客様の召し上がる時間に合わせて、炊き上がるよう工夫している。
「ごはんは炊きたてがいちばん。家庭でも食事時間に合わせて炊き上げるのが、おいしく頂く最大のコツ」
「吉兆」では締めのご飯を白飯と炊き込みの2種類用意する。白飯はふっくら炊き上がる徹の羽釜で、炊き込みはおこげも楽しめる土鍋、と使い分ける。徳岡さんの代になって、米の研ぎ方も変えた。力をこめてもみこむように研ぐと、米粒が割れてしまうからと、指先でやさしく研ぐようにした。研いだ米はざるにあげて羽釜へ。水加減した後、強火にしてグングン温度を上げる。吹いたところでふたを開け、上下をひっくり返すように混ぜる。炊き上がったら、蒸らさずそのままお座敷に。米の旨味をギュンと閉じ込めたふっくら真っ白なごはん。極上の贅沢をどうぞ。 |