「野の菜」と書いて野菜。もともと野生の菜の意味だったのだろう、野の菜をみつけるのはいまでは難しいが、味わいのなかに野生の名残がみられる。えぐみや苦味、自然な甘み。野菜の味わいを素直に生かすことができれば、野菜料理は成功だ。それにはどのようにすればいいか。「京都吉兆」主人・徳岡邦夫さんは言う。
「シンプルに野菜の風味を生かす。出しに浸したり、焼いて塩を振ったり。もうひとつはほかのものと合わせて”妙味”に仕立てること。複数の野菜が組み合わせると、単なる足し算以上の結果が出ます。筑前煮はこの典型でしょう」
今回、料理初心者のためにキャベツの塩もみを伝授してくれた。ご主人自ら、キャベツを親指の先ほどの大きさにちぎる。食べやすいサイズにするのは野菜料理の基本。切り方次第で火や味のいり具合、食感も変わってくる。ちぎったキャベツは塩をしておいておく。このまま水気を絞り、お皿に持っても立派な一品。これだけでもおいしいだろうなんて思ったけれど、主人はまだまだ手を止めない。きゅうりの塩もみ、しょうがやみょうが、大葉の千切り、だし昆布を細かく切ったものまでプラス。これを箸と手でひとつひとつ、きちんと和えていく。空気を含ませながら、ふんわり和えると、一体感が出てくる。味見をしてみると、塩もみとは思えないほどの複雑妙味だ。
限りない野菜料理の入門として、まず、塩だけで味付けした"妙味"を体験してみては。 |