20歳の頃、仕入れは大阪の中央卸売市場に出かけていた。「大阪では仲卸の人から出されたもんにアカン!と文句を言うと初めていいモノが出てくる。駆け引きして仕入れるのが流儀でした」。ところが京都は違う。大阪同様、仲卸との駆け引きをしようとすると「仲卸人を大事にしろ」と先代からたしなめられた。付き合いの深い仲卸が出した食材に、ケチをつけるのはあり得ないという風潮だった。
しかし、今はそんな時代ではない、というのが京都・大阪・東京、三都市の卸売市場を体験した徳岡さんの見解。料理人と仲卸、双方が情報収集・交換し、よりよい食材を京都市場に流通させたいと考えている。
いつも5、6軒の仲卸を回り食材を仕入れるが、各店で積極的に会話を重ねるように心掛けている。例えば「うちでは食事の締めに品種の違う苺を3、4種類出して食べ比べてもらんです」と話す。青果店が「そうか、それなら!」と奮起して、珍しい苺を仕入れてくれるようになったら、と。『吉兆』には、野菜を直接仕入れる契約農家があるし、今は東京や大阪からでも仕入れられる時代。だが、子供の頃から通う地元・京都の市場を活性化した、それが互いのためと、思い入れも人一倍なのである。