さて、蛤はこの店、マナガツオはここ……と。水産棟を回り終えると、続いては青果棟へ。京都の特徴のひとつは、青果棟の中が京野菜専門のエリアとそれ以外の野菜を扱うエリアの二つに分かれていること。さすがに京野菜は朝採りの地物だけあって、丸々と立派な海老芋や、旬の筍、ピンと葉の立った水菜に深紅の京人参などが所狭しと並んでいる。「契約農家だけでまかなえないものは、ここで」と徳岡さん。果物専門の卸『芋松』では店の人が「食べてみてください!」と出してきた新品種のミカンを試食。「皮薄いね、これ、完熟しているってことだよね?」と気に入り、お買い上げ。早朝から仲卸とパワーをぶつけ合う仕入れを重ね、『吉兆』の仕入れはほぼ終了。最後は場内にある行きつけの喫茶『ロンド』へ。周辺には洋食屋、食堂なども並ぶ。仕入れを終えた京の料理人たちの朝食スポットだ。徳岡さんは『ロンド』でサンドウィッチとコーヒーというのが定番。ここで一息ついてから、仕入れた食材を嵐山に持ち帰る。全国から客を迎える『吉兆』の慌しい一日が始まろうとしている。