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湯木氏が松木地盆を弁当箱にすることを試みたのは、田の字形の仕切りが互いの匂いや味が移らないという利点があることを考慮してのことでした。まず最初に所持する松木地盆の左右の寸法を縮め、高さを高くし、被せ蓋をつけて明るい春慶塗とし、底面の絵は省略して「松花堂」の焼印を捺すことにしました。
(写真2) |
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松花堂弁当(縦横23.5cm 高5cm)
吉兆の店で使い古した弁当箱。松花堂の焼印があり、仕切りの上面は1の写真と同じく凸状になっています。 |
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実際の寸法で示しますと(写真1の松木地盆と写真2の弁当箱との比較)、一辺の寸法を27.5cmから23.5cmに縮め、高さは3.5cmから5cmへと高くしました。底面積は四分の一ほど小さくなりました。面積を小さくしたことによってすっきりと料理が収まりやすい寸法になり、高さを高くしたことで料理を盛り込んでも料理が縁からはみ出ることがなくなりました。そして蓋をつけることによって料理の乾燥を防ぎ、埃を防ぐことができました。
さらに湯木氏は、松花堂昭乗の書画に捺された印を模して「松花堂」の焼印を制作して弁当箱の蓋と身に捺しました。これは無地の春慶塗への装飾というだけでなく、蓋をしたときに前後が判らなくなることから目印の意味を兼ねて考えられたものです。松花堂の遺跡にあった松木地盆が原形であったことから、敬意を表す意味でこの焼印が考案されたものと思われます。 |